仕事を辞めたいと思ったら|迷いの正体別に、次にやることを決める
「仕事を辞めたい」と検索した時点で、もう何かが起きています。ただ、その「辞めたい」の中身は人によってまったく違います。今日が特別につらかっただけの人もいれば、半年前から同じことを考え続けている人もいます。この2つに同じ答えを出すことはできません。
この記事では、辞めたい気持ちを段階と理由で切り分けて、それぞれについて「次に何を確かめればいいか」を示します。辞めることを勧める記事でも、思いとどまらせる記事でもありません。判断の材料を、いま手元に集めるための記事です。
「辞めたい」には3つの段階がある
まず、いまの自分がどこにいるかを確かめてください。ここで扱いが変わります。
1. 今日だけ、強く辞めたい
ミスをした、怒られた、理不尽なことがあった。その日の出来事への反応です。この段階で退職届のような後戻りできない書類を出すのは避けてください。数日たっても同じ気持ちが残るかを見てから動いても、失うものはありません。
2. 数か月、同じことを考え続けている
出来事があった日を除いても気持ちが変わらず、休みの日にも消えない。この段階になると、感情ではなく判断として扱う必要があります。理由を具体的にして、辞める以外の選択肢と並べて比べる作業に進んでください。この記事の後半がその作業です。
3. 睡眠や体調に変化が出ている
眠れない、食べられない、朝になると吐き気がする、涙が出る、以前できていたことができない。この段階では、辞めるかどうかより先に確認することがあります。
仕事で精神的に限界のとき、退職より先に確認することを読んでください。
辞めたい理由を6つに分ける
「なんとなく全部つらい」と感じているときほど、理由を分けると打つ手が見えます。当てはまるものから読んでください。複数当てはまっても構いません。
1. 人間関係(上司、同僚、職場の空気)
令和6年雇用動向調査で、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた人は男性9.0%、女性11.7%でした。相手を変えることはできませんが、距離を変えることはできます。異動の希望、記録の残し方、ハラスメントに当たるかどうかの線引きから確認してください。
人間関係で仕事を辞めたいとき
2. 労働時間、仕事量、休日
同じ調査で「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は男性8.6%、女性12.8%。この理由は、辞める前に会社へ申し出ることで動く場合があります。また、条件が法令や契約に反しているなら、それ自体が交渉の材料になります。
残業が多いとき、辞める前にできること/労働条件通知書を確認する/所定労働時間の実態
3. 給料、評価、昇給
「給料等収入が少なかった」は男性10.1%、女性8.3%。この理由で動く場合、確かめるべきは「他社ならいくらか」という相場です。感覚ではなく、実際の求人と提示条件で判断します。転職者の賃金は令和6年で増加40.5%、減少29.4%と、増加が減少を上回っています。
年齢別の転職入職率と賃金の変動/給与・待遇が退職理由のとき
4. 能力不足、向いていないと感じる
ミスが続く、覚えられない、周りについていけない。この感覚は、能力の問題と環境の問題が混ざっていることがほとんどです。教える人がいない、業務量が一人分を超えている、そもそも未経験の分野を任されている。切り分けてから判断してください。
能力不足で辞めたいと感じるとき
5. 心身の不調
眠れない、動悸がする、通勤中に涙が出る、休日も回復しない。この状態では、まともな判断ができなくなっているのが普通です。辞める判断を急がず、受診と休職という選択肢を先に確認してください。在職中でなければ使えない制度があります。
精神的に限界のとき/辞める前に「休職」という選択肢
6. やりがい、将来性、成長
「会社の将来が不安だった」は男性7.4%、女性5.1%、「仕事の内容に興味を持てなかった」は男性4.4%、女性3.6%。この理由は緊急性が低い代わりに、放っておいても解決しません。期限を切って動かないと、数年が過ぎます。在職中に転職活動を始めて、実際の求人を見るところからで構いません。
在職中に転職活動を進める方法/みんなが前職を辞めた理由
自分の状況が制度上どう扱われるか調べる
いまの状況を入力すると、離職理由の区分(自己都合か、特定理由離職者などに当たりうるか)、給付制限の扱い、どこに相談できるかを、公的資料の記載に照らして確認できます。辞めるべきかどうかを点数で判定するものではありません。
退職の判断ナビを使う(無料)辞める以外に4つの選択肢がある
辞めるという選択肢しか見えていないときは、視野が狭くなっているだけのこともあります。次の4つは、在職中でなければ使えません。辞めてからでは選べなくなるので、先に確認しておく価値があります。
休職する
心身の不調が理由なら、退職の前に休職という段階があります。健康保険の傷病手当金は、在職中に受給要件を満たしていれば退職後も継続して受け取れる場合があります。辞めてから体調を崩した場合は対象になりません。順番が結果を変えます。
辞める前に「休職」という選択肢/傷病手当金は退職後も受け取れる
異動・配置転換を希望する
人間関係や業務内容が理由なら、会社を変えなくても環境が変わる可能性があります。希望が通るとは限りませんが、申し出た記録は残ります。それでも改善されなかったという事実は、後で退職を判断するときの材料になります。
配置転換・異動を希望する
労働条件の改善を申し出る
残業、休日、業務量。声を上げても無駄だと感じていても、申し出た事実があるかないかで、その後に使える手段が変わります。まず就業規則と労働条件通知書を確認し、契約と実態のズレを具体的にしてください。
辞める前にできること/就業規則はどこで見られるか
社外の窓口に相談する
ハラスメント、賃金の未払い、一方的な労働条件の引き下げ。社内で解決しない問題には、公的な相談先があります。総合労働相談コーナーは全国の労働局・労働基準監督署内にあり、無料で利用できます。
総合労働相談コーナーと助言・指導・あっせん/パワハラの定義/ハラスメントの証拠の残し方
多くの人が同じ3つで止まる
辞めたい理由がはっきりしても、次の3つで足が止まります。それぞれ個別に整理しています。
「これは甘えではないか」
逃げかどうかを決めるのは、辞めるという行為そのものではありません。統計を見れば、同じ理由で辞めている人は大勢います。
仕事を辞めたいのは甘えなのか
「本当に辞めるべき状態なのか」
辞めたほうがいい状態と、いま動かないほうがいい状態は、いくつかの点で区別できます。
仕事を辞めるべきサインと、辞めないほうがいいケース
「次が決まっていないのに辞めていいのか」
在職中に探すか、辞めてから探すか。どちらにも負荷があり、失業保険の枠にも期限があります。
仕事を辞めたいけど次がないとき/退職に必要な貯金はいくらか
お金、手続き、家族、辞め方まで含めた不安を一覧で見たい場合は退職が不安で決められないときに|49の不安への答えにまとめています。
年代・在籍期間ごとの判断材料
同じ「辞めたい」でも、年代と在籍期間によって確認すべき制度が変わります。統計と制度を年代別に整理しています。
辞めると決めたら、順番だけ間違えない
退職で揉めるケースの多くは、段取りの前後が入れ替わったことで起きています。この順番を守るだけで、大半のトラブルは避けられます。
- 就業規則を確認する -- 退職の申し出時期、退職金規程の有無、有給の残日数を先に押さえます
- 退職日を決める -- 有給消化と引き継ぎの期間を逆算します。民法627条により、期間の定めのない雇用では申し入れから2週間で契約は終了します
- 直属の上司に口頭で伝える -- 書類より先です。説得する必要も、納得してもらう必要もありません
- 退職届を出す -- 退職願と退職届は性質が違います。退職届は一方的な通知なので、提出後の撤回は原則できません
- 引き継ぎと有給消化を進める
- 退職後の手続きをする -- 健康保険、年金、住民税、失業保険。期限があるものが多くあります
今日できることは、たぶん1つだけでいい
辞めるかどうかを今日決める必要はありません。ただ、何もしないと状況は変わらないのも確かです。次のうち1つだけ、今日中にやってみてください。
- 就業規則を探して、退職の申し出時期の条文だけ読む
- 有給休暇の残日数を確認する
- いま感じている不満を、日付と出来事の形で3つだけ書き出す
- 求人を5件だけ見て、条件の相場を確かめる
- 体調に変化が出ているなら、受診の予約を取る
どれも、辞めることを決めなくてもできる作業です。そして、この5つが終わっている人は、辞めるにしても残るにしても、はるかに有利な位置にいます。
よくある質問
Q. 仕事を辞めたいと思うのは、どのくらいの人が経験することですか?
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、転職した人が前職を辞めた理由には、職場の人間関係が好ましくなかった(男性9.0%、女性11.7%)、労働時間・休日等の労働条件が悪かった(男性8.6%、女性12.8%)、給料等収入が少なかった(男性10.1%、女性8.3%)などが並びます。また令和4年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%です。辞めたいと感じること自体は、統計上まったく珍しいことではありません。
Q. 辞めたい気持ちが一時的なものか、そうでないかはどう見分けますか?
具体的な出来事があった日を除いても同じ気持ちが残るか、休みの日にも消えないか、という2点が目安になります。特定の一件への反応であれば時間とともに薄れます。数か月にわたって同じ状態が続く場合や、睡眠・食欲・体調に変化が出ている場合は、感情ではなく状態として扱い、医療機関や相談窓口を先に検討してください。
Q. 辞めると決める前に、確認しておくべきことはありますか?
辞める以外の選択肢を一度確認しておくことをおすすめします。休職、配置転換や異動の希望、労働条件の改善の申し出、社外の労働相談窓口などが該当します。また、就業規則と労働条件通知書を実際に読むと、退職の申し出時期や有給の残日数、退職金規程の有無がはっきりします。これらを確認したうえでの判断であれば、後から振り返っても説明のつく決断になります。