仕事を辞めるべきサインと、辞めないほうがいいケース
辞めるべきかどうかを、他人が決めることはできません。ただ、判断を誤りやすい状態にあるかどうかは、外から見て分かる指標があります。
この記事では、退職を考えるときに見るべきサインを、体・環境・制度の3方向から整理します。あわせて、いま動かないほうがいいケースと、その場合に先に確保しておくべきものも示します。当てはまる数が多いほど辞めるべきだ、という単純な話にはしません。
1. 体に出ているサイン(最優先)
最も優先度が高いのはこれです。ほかのどのサインより先に扱ってください。
- 寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目が覚めてしまう状態が続いている
- 食欲が落ちた、または過剰に食べてしまう
- 通勤中や出社直前に動悸、吐き気、腹痛が出る
- 休日も回復せず、月曜が近づくと体調が悪くなる
- 涙が出る、感情の起伏が抑えられない
- 以前は普通にできていた作業でミスが増えた、集中が続かない
- お酒の量が増えた
これらは意欲や性格の問題ではなく、状態として出ている変化です。この段階で「もう少し頑張れるか」を考えるのは、判断としては危険です。というのも、この状態では判断能力そのものが落ちているためです。
重要なのは順番です。在職中であれば、受診・休職・健康保険の傷病手当金という選択肢があります。退職後に発症したものは、傷病手当金の対象になりません。先に辞めてしまうと、使えたはずの制度が消えます。
2. 環境のサイン(改善の見込みで判断する)
職場側の状況です。ポイントは、つらいかどうかではなく「続けた場合に変わる見込みがあるか」で見ることです。
改善を申し出たが、何も変わらなかった
業務量、残業、人員配置について申し出たのに動きがない。これは最も分かりやすいサインです。一度も言っていないなら、まだ材料が足りません。言ったうえで変わらなかったという事実が、判断の根拠になります。
辞める前にできること
同じ理由で辞める人が続いている
自分の前にも同じ部署から同じ理由で人が抜けている場合、問題は個人ではなく構造にあります。構造は、担当者が変わった程度では動きません。
求人票や説明と、実際の労働条件が違う
所定労働時間、休日数、固定残業代の時間数、試用期間の条件。まず労働条件通知書を確認してください。契約と実態がズレているなら、それは我慢の対象ではなく、指摘と相談の対象です。
労働条件通知書を確認する/労働条件を一方的に下げられたとき
ハラスメントがある
職場での優越的な関係を背景とした言動により就業環境が害されている状態は、パワーハラスメントに当たります。事業主には防止措置を講じる義務があります。社内で解決しないなら、社外の窓口があります。証拠は先に残してください。
パワハラの定義/証拠の残し方/総合労働相談コーナー
賃金や残業代が正しく支払われていない
未払いは、放置しても自動的には解消されません。退職後でも一定期間は請求できますが、証拠は在職中のほうが集めやすいという現実があります。
未払い残業代を請求できる期間/労働基準監督署への申告
3. 時間のサイン(見込みが立たないもの)
緊急性は低いものの、放っておいても解決しない種類のサインです。
- 3年後の自分の姿が、この職場の誰かに重なるか -- 重なる人が一人もいない、あるいは重なる人のようになりたくない場合、続ける理由は薄くなります
- 身につくものがあるか -- 経験が社外でも通用する形で積み上がっているか、その会社でしか使えない形で消えているか
- 昇給や評価の仕組みが説明されているか -- 基準が示されないまま「頑張れば報われる」と言われている状態は、確認できる根拠がありません
- 会社の事業そのものに見通しがあるか -- 令和6年雇用動向調査では「会社の将来が不安だった」を理由に挙げた人が男性7.4%、女性5.1%います
年齢別の転職の実態は年齢別の転職入職率と賃金の変動にまとめています。転職者の賃金は令和6年で増加40.5%、減少29.4%です。
逆に、いま動かないほうがいいケース
辞める判断そのものは正しくても、タイミングを数週間ずらすだけで結果が変わることがあります。次に当てはまる場合は、いったん手を止めて確認してください。
特定の出来事の直後で、まだ数日しか経っていない
強い感情が残っている時期の判断は、後から見て条件が悪くなりがちです。とくに、この段階で退職届を出すのは避けてください。退職届は一方的な通知なので、提出後の撤回は原則できません。
退職届と退職願の違い/退職届の撤回・取り消し
賞与の支給日在籍要件を確認していない
多くの会社は、賞与の支給日に在籍していることを支給の条件にしています。退職日が数日違うだけで、受け取れるかどうかが変わります。
ボーナスをもらってから退職する方法
退職金の支給要件を確認していない
退職金は法律で義務づけられた制度ではなく、就業規則や退職金規程の定めによります。勤続年数の区切りで金額が変わる規程もあります。まず規程を読んでください。
退職金の相場/退職金がない会社は違法か
有給の残日数を把握していない
退職日を先に決めてしまうと、残った有給を消化しきれない形になることがあります。会社の時季変更権は、退職日より後の日には行使できません。だからこそ、残日数を確認してから退職日を決める順番になります。
有給の残日数を確認する方法/退職時の有給消化
審査を伴う手続きを予定している
住宅ローン、クレジットカードの発行、賃貸契約。審査の基準は金融機関ごとに異なりますが、実務上は在職中のほうが進めやすいのが一般的です。予定があるなら先に済ませてください。
なお、心身に不調が出ている場合は、これらの確認を待つ必要はありません。数万円の損得より、離れることが優先されます。
迷っている間にやっておくと、どちらでも損しないこと
辞めると決めていなくても進められて、残る場合も辞める場合も無駄にならない作業があります。判断を保留したまま、これだけ進めてください。
- 就業規則を読む -- 退職の申し出時期、退職金規程、休職制度の有無が分かります
- 有給の残日数を確認する
- 健康診断を受ける -- 在職中のほうが受けやすく、記録も残ります
- 求人を見て相場を知る -- 応募しなくても、条件の水準は分かります
- 不満を日付と出来事の形で記録する -- 後で争いになったときの証拠にも、自分の判断の振り返りにもなります
- 生活費が何か月分あるか計算する
自分の状況が制度上どう扱われるか調べる
いまの状況を入力すると、離職理由の区分、給付制限の扱い、相談先を、公的資料の記載に照らして確認できます。辞めるべきかを点数で判定するものではありません。
退職の判断ナビを使う(無料)よくある質問
Q. 仕事を辞めるべきサインとして、最も優先度が高いものは何ですか?
体に出ている変化です。眠れない、食べられない、通勤時に動悸や吐き気がする、休日も回復しない、以前できていた作業ができなくなった。これらは意欲や性格の問題ではなく、状態として現れている変化です。この場合は退職の判断より先に医療機関の受診を検討してください。在職中であれば休職や健康保険の傷病手当金という選択肢がありますが、退職後に発症したものは対象になりません。順番によって使える制度が変わります。
Q. 辞めないほうがいいのは、どんなときですか?
特定の出来事の直後で、まだ数日しか経っていない場合です。強い感情が残っている時期の判断は、後から見て条件が悪くなりがちです。また、退職金の支給要件や賞与の支給日在籍要件、有給の残日数など、日付で結果が変わるものを確認していない場合も、いったん確認を優先してください。数週間ずらすだけで金額が変わることがあります。ただし心身に不調が出ている場合は、この限りではありません。
Q. 辞めるかどうか迷っている間に、やっておくべきことはありますか?
在職中にしかできないことを先に済ませておくと、どちらに転んでも損をしません。具体的には、就業規則と労働条件通知書を読む、有給の残日数を確認する、健康診断を受ける、住宅ローンやクレジットカードなど審査を伴う手続きを済ませる、転職市場の相場を求人で確認する、といったものです。これらは退職を決めていなくても進められます。