就業規則はどこで見られるか
退職の準備は、就業規則を読むところから始まります。 退職を申し出る期限、退職金の有無、有給の扱いは、すべてここに書かれているためです。 そして就業規則は会社が労働者に周知しなければならないもので、 頼まないと見せてもらえない性質のものではありません。
このページは労働基準法89条・106条と労働基準法施行規則52条の2の条文に基づいています。
周知の方法は3つに限られている
労働基準法106条1項は、就業規則を労働者に周知させなければならないと定め、 その方法は厚生労働省令によるとしています。施行規則52条の2が挙げる方法は次の3つです。
1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
休憩室や事務所の書棚に冊子として置いてあるのが典型です。まずは総務・人事の近くを探してください。
2. 書面を労働者に交付する
入社時に配られていることがあります。手元の書類一式を確認してみてください。
3. 社内の端末で常時確認できる状態にする
社内ポータルや共有フォルダに置く方法です。閲覧できる機器が各作業場にあることが条件です。
自分の会社がどの方法を採っているかがわかれば、探す場所が絞れます。 心当たりがなければ、総務・人事に「就業規則はどこで確認できますか」と聞くのが早道です。 周知は義務なので、答えられないほうがおかしい質問です。
10人未満の会社には作成義務がない
労働基準法89条1項は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけています。10人未満の事業場にはこの義務がないため、 就業規則そのものが存在しないことがあります。
その場合は、労働契約書や労働条件通知書が労働条件を確認する主な資料になります。こちらは人数にかかわらず交付が必要です。
退職前に見ておく6か所
全部読む必要はありません。退職に関係するのは限られた条項です。 労働基準法89条が必ず記載すべきとしている事項を手がかりに探すと早く見つかります。
退職に関する事項
退職を申し出る期限、手続きの流れ、提出先。労働基準法89条1項3号により必ず記載されています。
退職手当の定め
退職金があるか、対象になる勤続年数、計算方法、支払時期(同項3号の2)。
年次有給休暇の扱い
基準日、繰越分と当年分のどちらから消化するか、計画的付与の有無。
賃金の締切日と支払日
最終給与がいつ支払われるかを判断する材料になります(同項2号)。
休職に関する定め
私傷病で休んでいる場合、休職期間の満了と退職の関係を確認します。
競業避止・秘密保持に関する定め
退職後の制約が書かれていることがあります。
「退職は1か月前まで」と書いてあったら
就業規則に退職の申出期限が書かれていることがあります。 一方、期間の定めのない雇用について民法627条1項は、 解約の申入れの日から2週間を経過することによって雇用は終了するとしています。
この2つの関係は就業規則の「1か月前」と民法627条で扱っています。就業規則の定めを無視してよいという単純な話でもないため、 実際の進め方も含めて確認してください。
写しをもらえるか
条文が求めているのは周知であって、写しの交付そのものではありません。 ただし周知の方法として書面の交付が挙げられているとおり、 交付を断る理由は本来ありません。閲覧しかできない場合でも、退職に関係する条項は書き写しておくことをおすすめします。
退職の交渉で条件が食い違ったとき、規程の文言を正確に押さえていることが効いてきます。 とくに退職金の計算方法と支払時期は、後から確認しづらくなります。
よくある質問
就業規則を見せてもらえないのですが、違法ですか?
労働基準法106条1項は、使用者は就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他厚生労働省令で定める方法によって労働者に周知させなければならないと定めています。周知は義務であり、労働者から請求されたときだけ見せればよいというものではありません。所在を教えてもらえない場合は、労働基準監督署に相談できます。
就業規則がない会社もありますか?
作成義務があるのは常時10人以上の労働者を使用する使用者です(労働基準法89条1項)。10人未満の事業場には作成・届出の義務がないため、就業規則が存在しないことがあります。その場合は労働契約書や労働条件通知書が労働条件を確認する主な資料になります。なお、任意に作成している場合は、10人未満でも周知の対象になります。
退職に関することは就業規則に書いてありますか?
書いてあります。労働基準法89条1項3号は「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)としています。退職の申出期限や手続きはここに書かれています。退職金については同項3号の2により、退職手当の定めをする場合には適用される労働者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払の時期を記載することとされています。
社内サーバーに置いてあるだけでも周知したことになりますか?
労働基準法施行規則52条の2第3号は、使用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルなどに記録し、かつ各作業場に労働者がその内容を常時確認できる機器を設置することを周知の方法として挙げています。単にデータが存在するだけでなく、労働者が常時確認できる状態になっていることが必要です。閲覧できる端末がない、パスワードを知らされていないといった状態は、この要件を満たしているとはいえません。