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退職金の相場

退職金の額は法律で決まっているものではなく、会社ごとの退職金規程で決まります。そのため 「いくらもらえるか」は自社の規程を見るしかありませんが、自分の見込み額が世間の水準からかけ離れていないかを確かめるためには統計が役に立ちます。このページの数値はすべて国と自治体の公式調査から転記したものです。

このページで使っている調査

  • 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」(結果の概況)— 常用労働者30人以上の民営企業が対象
  • 東京都「令和6年中小企業の賃金・退職金事情」— 都内の中小企業が対象
  • いずれも厚生労働省のまとめ資料(PDF)に同じ数値が掲載されています

そもそも退職金がある会社は約4分の3

令和5年就労条件総合調査では、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は74.9%でした。約4社に1社は退職金制度そのものがありません。

退職金の支給は法律上の義務ではありません。労働基準法89条3号の2は 「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」 を就業規則に記載しなければならないと定めています。制度を設けるかどうかは各社の任意で、 設けた場合にはじめて就業規則への記載義務が生じるという構造です。

自分の会社に制度があるかどうかは、就業規則または退職金規程を確認してください。 詳しくは退職金がない会社は違法かで解説しています。

定年退職者の平均額(勤続年数別)

勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者1人あたりの平均退職給付額です(単位:万円)。 退職一時金と退職年金を合算した「退職給付額」で、年金分は一時金換算されています。

勤続年数大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
中学卒
(現業職)
1,8961,6821,1831,059
20〜24年1,021557406292
25〜29年1,559618555498
30〜34年1,8911,094800757
35年以上2,0371,9091,4711,369

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」/勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者

勤続20〜24年と35年以上を比べると、大学・大学院卒で1,021万円→2,037万円と約2倍の開きがあります。 退職金は勤続年数に対して直線的ではなく、後半になるほど加算のペースが上がる設計の会社が多いためです。

退職理由による差(定年・会社都合・自己都合・早期優遇)

同じ調査の、勤続20年以上かつ45歳以上の1人平均退職給付額を退職事由別に並べたものです(単位:万円)。

退職事由大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(現業職)
中学卒
(現業職)
定年1,8961,6821,1831,059
会社都合1,7381,385737
自己都合1,4411,280921731
早期優遇2,2662,4322,146

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」/「—」は調査対象数が少なく公表されていない区分

大学・大学院卒で見ると、自己都合退職は1,441万円で、定年退職1,896万円の約76%にとどまります。多くの会社の退職金規程が、 自己都合退職の場合に支給率を下げる設計になっているためです。

一方で早期優遇退職は定年を上回ります。 大学・大学院卒で2,266万円、高校卒(管理・事務・技術職)では2,432万円と、 定年退職より750万円多い水準です。早期退職の募集に割増金が上乗せされるためで、 募集がかかったときに応じるかどうかの判断材料になります。

自己都合と会社都合の違いは退職金だけでなく失業保険の給付日数や給付制限にも影響します。自己都合退職と会社都合退職の違いも併せて確認してください。

中小企業の相場は水準が異なる

上の調査は常用労働者30人以上の企業が対象で、大企業も多く含みます。 中小企業に勤めている場合は、東京都「令和6年中小企業の賃金・退職金事情」のモデル退職金の方が 実感に近い水準です(単位:万円。公表値は千円単位のため10で除して表記しています)。

勤続年数大学卒高校卒
自己都合会社都合自己都合会社都合
5年43.257.439.751.3
10年112.5144.898.5126.4
15年209.3255.9190.3237.3
20年346.8408.1288.1342.8
25年507.3615.6434.2510.0
30年750.7776.2575.7657.0
定年1,149.5974.1

出典:東京都「令和6年中小企業の賃金・退職金事情」モデル退職金(調査産業計)

大学卒・勤続20年・自己都合で346.8万円。先ほどの就労条件総合調査で見た 勤続20〜24年の定年退職者1,021万円とは大きな差があります。「退職金の平均は1,000万円超」という数字は、大企業・定年・勤続20年以上という条件付きの数値だと理解しておくと、期待値を見誤らずに済みます。

相場より大切なのは自社の退職金規程

統計はあくまで目安です。実際の支給額は勤続年数・退職事由・基本給・役職などを使った 自社の計算式で決まります。就業規則または退職金規程で次の3点を確認してください。

  • 支給対象になる勤続年数 — 「勤続3年以上」など下限が設けられていることが多い
  • 計算式と支給率 — 自己都合の場合に支給率が下がる規定になっているか
  • 支払の時期 — 退職日から何か月後に振り込まれるか

この3点は労働基準法89条3号の2で就業規則への記載が求められている項目なので、 制度がある会社なら必ずどこかに書かれています。

額面と手取りは違う

退職金には所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。ただし退職所得は退職所得控除があり、控除後の金額をさらに2分の1にしてから 課税されるため、給与と比べて税負担はかなり軽くなっています。

勤続20年を超えると1年あたりの控除額が40万円から70万円に増えるので、 長く勤めた人ほど税引き後に手元に残る割合が高くなります。

自分の退職金の手取りを計算する

退職金の額面と勤続年数を入れるだけで、所得税・復興特別所得税・住民税を差し引いた手取り額がわかります。

退職金 手取り計算機を使う

控除額の計算方法は退職所得控除の計算方法と早見表で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 勤続3年で辞めたら退職金はいくらですか?

東京都の令和6年調査のモデル退職金では、大学卒・勤続3年・自己都合で21.5万円、 会社都合で30.4万円でした。ただしそもそも勤続3年未満を支給対象外としている会社も多く、 同調査では自己都合の場合に最低勤続年数を3年としている企業が47.3%を占めています。

Q. 退職金の統計はなぜ調査によって金額が違うのですか?

対象企業の規模と、集計の考え方が違うためです。厚生労働省の就労条件総合調査は 常用労働者30人以上の企業の実際の支給額の平均、東京都の調査は中小企業の 「モデル退職金」(標準的な昇進をした人の想定額)です。自分の会社の規模に近い調査を見てください。

Q. 退職金は退職後いつ振り込まれますか?

就業規則で定められた支払時期によります。給与と違って退職日直後とは限らず、 1〜2か月後に設定している会社もあります。詳しくは退職金はいつ振り込まれるかをご覧ください。

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