退職所得控除の計算方法
退職金にかかる税金が給与よりずっと軽いのは、退職所得控除という大きな控除があるためです。 勤続20年を超えると1年あたりの控除額が40万円から70万円に増えるので、 長く勤めた人ほど税負担が軽くなる設計になっています。
このページの計算方法は国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」[令和7年4月1日現在法令等]に基づいています。
控除額の計算式
| 勤続年数(A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A計算額が80万円に満たない場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A - 20年) |
障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上記に100万円が加算されます。
勤続年数の1年未満は切り上げる
勤続年数に1年未満の端数がある場合は、その端数を1年に切り上げます。切り捨てではありません。
切り上げの影響が大きい例
- 勤続20年ちょうど → 20年として計算 → 控除額 800万円
- 勤続20年と1日 → 21年として計算 → 控除額 870万円
20年を超えた1年目から加算額が70万円になるため、わずか1日の違いで控除額が70万円変わります。 退職日を選べる状況なら、入社日から20年を超えるかどうかは確認する価値があります。
退職日の決め方は退職日・有給消化の逆算シミュレーターでも確認できます。
勤続年数別の控除額 早見表
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 勤続1年あたりの加算額 |
|---|---|---|
| 1年 | 80万円 | — |
| 3年 | 120万円 | +40万円 |
| 5年 | 200万円 | +40万円 |
| 10年 | 400万円 | +40万円 |
| 15年 | 600万円 | +40万円 |
| 20年 | 800万円 | +40万円 |
| 21年 | 870万円 | +70万円 |
| 25年 | 1,150万円 | +70万円 |
| 30年 | 1,500万円 | +70万円 |
| 35年 | 1,850万円 | +70万円 |
| 38年 | 2,060万円 | +70万円 |
| 40年 | 2,200万円 | +70万円 |
退職金が控除額以下なら課税退職所得は0円となり、所得税・住民税はかかりません。 勤続1年で加算額が「—」になっているのは、勤続2年以下では80万円の最低保障が適用され、 年数が増えても控除額が変わらないためです。 20年を超えたところで加算額が40万円から70万円に切り替わります。
控除を引いた後、さらに2分の1にする
課税の対象になる金額(課税退職所得金額)は次の式で求めます。
(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
例:勤続30年・退職金2,000万円の場合
- 退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 ×(30年 - 20年)= 1,500万円
- 課税退職所得金額 =(2,000万円 - 1,500万円)× 1/2 = 250万円
- 2,000万円のうち課税対象になるのは250万円だけ
給与所得と分けて計算する「分離課税」なので、その年の給与が高くても退職金の税率が 引き上げられることはありません。この2つの仕組みによって、退職金の税負担は 同じ額の給与を受け取る場合よりかなり軽くなります。
2分の1が使えない2つの例外
特定役員退職手当等(勤続5年以下の役員等)
役員等としての勤続年数が5年以下の人が、その役員等の勤続年数に対応して受け取る退職手当等です。2分の1の計算は適用されません。 対象になるのは法人の取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人、 国会議員・地方議会議員、国家公務員・地方公務員などです。
短期退職手当等(勤続5年以下の役員等以外)
役員等ではない人でも、勤続年数が5年以下の場合は短期退職手当等になります。 収入金額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については2分の1の計算が適用されません。 300万円以下の部分は通常どおり2分の1にできます。
短い勤続で高額の退職金を受け取るケースを想定した規定なので、 勤続5年以下でも退職金が控除額+300万円に届かなければ通常の計算と変わりません。
控除を受けるには申告書の提出が必要
退職所得控除は自動的に適用されるわけではありません。 勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出して はじめて、控除を反映した源泉徴収が行われます。
提出しなかった場合は控除が一切適用されず、支給額に一律20.42%を乗じた額が源泉徴収されます。 確定申告で取り戻すことはできますが、手間を考えれば提出しておくのが確実です。
詳しくは「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと20.42%引かれるで解説しています。
実際の手取りを計算する
控除額がわかっても、所得税の速算表と住民税の計算を手でたどるのは手間がかかります。 金額と勤続年数を入れれば手取りまで出せるツールを用意しています。