ハラスメントの証拠の残し方
ハラスメントを理由に離職した場合、特定受給資格者に当たる可能性があります。 ただしそこで問われるのは事実を示せるかどうかです。 そして記録の多くは、辞めた後には作れません。 まだ辞めると決めていない段階でも、残しておくことに損はありません。
このページは労働施策総合推進法30条の2と特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワーク)を前提に、実務上の進め方を整理したものです。個別の事案についての法的助言ではありません。
残すもの5つと、失われる時期
| 記録 | 残すタイミング |
|---|---|
| その日のうちに書いたメモいつ・どこで・誰が・何を言ったか・誰が見ていたか。事実と自分の感想は分けて書きます。 | 出来事の当日記憶が薄れると再現できません |
| メール・チャットの履歴指示や叱責のやり取りそのもの。自分宛のものに限るのが安全です。 | 在職中退職するとアカウントが停止され、取り出せなくなります |
| 勤怠の記録タイムカード、勤怠システム、業務用端末のログイン記録。 | 在職中退職後は原則としてアクセスできません |
| 診断書・通院の記録体調への影響を客観的に示すもの。 | 症状が出た時点後からさかのぼって作ることはできません |
| 相談した記録誰に、いつ、何を相談したか。社内窓口・上司・産業医・労働局のいずれも。 | 相談した都度会社が対応したかどうかを示す材料になります |
メモは「その日のうち」に書く
後からまとめて書いた記録と、出来事の当日に書いた記録では重みが違います。 毎日でなくて構いません。何かあった日にだけ、数行でも残してください。
書く内容は次の6点です。
- ・いつ(日付と時刻)
- ・どこで(会議室、朝礼、チャット上など)
- ・誰が(役職と氏名)
- ・何を言ったか・したか(できるだけそのままの言葉で)
- ・誰が見ていたか(同席者)
- ・自分がどう感じたか(事実とは分けて書く)
事実と感想を混ぜないことが大切です。 「ひどいことを言われた」ではなく「〇〇と言われた」と書き、 感じたことは別の行に書きます。
会社の情報を持ち出すことには別の問題がある
メールやチャットの履歴を残すとき、会社の営業秘密まで一緒に持ち出さないよう注意してください。 不正競争防止法上の営業秘密にあたる情報を持ち出すと、 ハラスメントの問題とは別に責任を問われる可能性があります。
ハラスメントに関する自分宛のやり取りに範囲を絞るのが基本です。 線引きの考え方は会社のデータの持ち出しにまとめています。
相談したこと自体が記録になる
社内の相談窓口、上司、産業医、あるいは都道府県労働局の総合労働相談コーナー。 どこに相談しても、いつ誰に相談したかという事実が残ります。 会社が対応したかどうかを示す材料にもなります。
労働施策総合推進法30条の2第2項により、 相談したことや調査に協力して事実を述べたことを理由とする 不利益な取扱いは禁止されています。
社外の窓口は総合労働相談コーナーです。無料で、予約なしでも利用できます。手続きの流れは総合労働相談コーナーと助言・指導・あっせんにまとめています。
体調に出ているなら受診を優先する
記録という観点を抜きにしても、体調に影響が出ているなら受診してください。 そのうえで診断書は、状態を客観的に示す資料になります。
医師から働くことが難しいと言われている場合、 心身の状況による離職として特定理由離職者に当たる可能性があります。 また傷病手当金の対象になることもあります。辞める前に「休職」という選択肢もあわせて確認してください。
よくある質問
メモだけでも意味がありますか?
あります。その日のうちに書いた記録は、後からまとめて書いたものより重みが違います。いつ・どこで・誰が・何を言ったか・誰が見ていたか・自分がどう感じたかを、事実と感想を分けて書いてください。手書きのノートでも、日付が自動で記録されるアプリでも構いません。重要なのは、出来事から時間を空けずに残すことです。
録音してもよいのですか?
自分が参加している会話を記録すること自体は、一般に行われています。ただし就業規則で社内での録音を制限している会社もあり、また業務上の秘密が含まれる場合は取扱いに注意が必要です。録音した内容を社外に出す場合はとくに慎重に扱ってください。判断に迷う場合は、録音より先に、日付入りのメモとやり取りの保存から始めるのが現実的です。
会社のメールやチャットは辞めた後も見られますか?
通常は見られなくなります。退職するとアカウントは停止され、業務用端末も返却するためです。つまり在職中にしか取り出せません。ただし会社の情報を持ち出すことには別の問題があるため、ハラスメントに関する自分宛のやり取りに限るなど、範囲を絞って扱ってください。判断に迷う場合は相談窓口で確認するのが安全です。
病院に行っておいたほうがよいですか?
体調に影響が出ているなら、記録という観点を抜きにしても受診してください。そのうえで、診断書は状態を客観的に示す資料になります。医師から働くことが難しいと言われている場合、心身の状況による離職として特定理由離職者に当たる可能性もあります。また傷病手当金の対象になることもあるため、早めの受診には複数の意味があります。