人間関係で仕事を辞めたいとき|逃げる前に確認できること
仕事の内容には不満がないのに、特定の人がいるせいで出社が苦痛になる。この理由で辞めることを、多くの人が「自分が弱いから」だと考えます。
しかし厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた人は男性9.0%、女性11.7%。給料や労働条件と並ぶ主要な離職理由です。
この記事では、辞める前に確認できることを整理します。相手を変えることはできませんが、距離と記録は変えられます。
まず、性質を切り分ける
「人間関係がつらい」と一言で言っても、中身によって打つ手がまったく違います。
1. 特定の一人が原因
上司、先輩、同僚のうち一人。この場合は距離を変える手段が効きます。異動の希望、席の配置、担当業務の変更。会社を辞めなくても環境が変わる可能性が最も高いパターンです。
2. 職場全体の空気が合わない
誰か一人ではなく、価値観や進め方が全体として合わない。これは部署異動でも変わらないことが多く、会社単位で判断することになります。ただし、同じ会社の別部署の実態は、意外と知らないまま辞めていることもあります。
3. ハラスメントに当たる行為がある
人格の否定、他の人の前での叱責、無視、過大な要求。これは相性の問題ではなく、制度上の対応が用意されている問題です。次の項で線引きを示します。
4. 孤立している、話す相手がいない
攻撃されているわけではないが、必要以上の会話がなく、居場所がないと感じる。この状態が長く続くと心身に影響が出ます。不調のサインが出ていないかを先に確認してください。
精神的に限界のとき
「合わない」と「ハラスメント」の線引き
ここは重要な分かれ目です。ハラスメントに該当するなら、我慢して解決する話ではなくなります。
パワーハラスメントは、職場での優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境が害されるものを指します。事業主には防止措置を講じる義務があります。
該当しうる行為の例
- 人格を否定する発言、繰り返しの叱責、他の従業員の前での威圧的な叱責
- 無視する、必要な情報を意図的に与えない、職場で孤立させる
- 明らかに遂行不可能な業務を強制する
- 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事だけを命じる
- 私的なことに過度に立ち入る
一方で、業務上必要な指導や、適正な範囲の注意は該当しません。厳しく感じても、業務上の必要性と手段の相当性があるかどうかで判断されます。
自分のケースが該当するか迷う場合、全国の労働局・労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。該当するかどうかを自分で判定する必要はありません。
辞める前に、記録だけは残しておく
これはこの記事で最も実利のある部分かもしれません。人間関係が理由で辞める場合、記録があるかないかで、その後の扱いが変わることがあります。
記録が効いてくる場面
- 失業給付の離職理由 -- 上司や同僚からの故意の排斥やいじめ、著しい冷遇を受けたことが離職の理由である場合、特定受給資格者に当たる可能性があります。判断はハローワークが行うため、経緯の分かる資料が要ります
- 会社との交渉 -- 具体的な日時と発言があると、話が「感じ方の違い」で終わらなくなります
- 自分の判断の振り返り -- 辞めた後、記憶では良かった部分だけが残ります。当時の記録は、判断が正しかったかを確かめる材料になります
残し方は難しくありません。日付、場所、誰が、何と言ったか(したか)、周りに誰がいたか。これをその日のうちにメモしておくだけです。体調に変化が出ているなら、受診の記録も残ります。
辞める以外に、距離を変える方法がある
相手は変えられません。ただし、相手との距離は変えられる場合があります。
異動・配置転換を希望する
希望が通るとは限りません。ただ、申し出た記録は残ります。「異動を希望したが認められず、状況も改善しなかった」という事実は、退職を判断するときにも、離職理由を説明するときにも意味を持ちます。
配置転換・異動を希望する
社内の相談窓口を使う
ハラスメントの相談窓口は、事業主が設置することとされています。使いにくいと感じる場合でも、相談した記録が残ることに意味があります。社内で解決しなかったという経緯が、社外の窓口に相談するときの前提になります。
接触の頻度を物理的に減らす
やり取りを口頭からメールやチャットに寄せる、共有の時間帯をずらす、報告の経路を変える。記録が残る手段に寄せることは、負担を減らすと同時に証拠を残すことにもなります。
社外の窓口に相談する
社内で解決しない場合、総合労働相談コーナーでは助言・指導やあっせんという手続きも案内されます。無料で、匿名での相談も可能です。
助言・指導・あっせん/労働基準監督署への申告
次の職場で繰り返さないために確認すること
人間関係で辞めるときに一番の不安は、「次も同じだったらどうしよう」です。入る前に完全には分かりませんが、確かめられることはあります。
- 配属予定の部署の人数と構成を聞く
- 直属の上司にあたる人と、面接の場で実際に会えるか確認する
- その職種の入れ替わりの多さを聞く
- 質問に対する反応を見る(はぐらかす、答えたがらない場合、その反応自体が情報です)
なお面接では、退職理由として人間関係をそのまま伝えるかどうかで迷う人が多くいます。事実を偽る必要はありませんが、伝え方には形があります。
辞めると決めたときの進め方
人間関係が理由の場合、その相手が退職の申し出先である直属の上司であることも多いという難しさがあります。
原則は直属の上司に伝えますが、その相手からのハラスメントが理由である場合は、人事部門や、さらに上位の役職者に伝えることも選択肢になります。また、どうしても対面で伝えられない場合、口頭以外の手段でも退職の意思表示は有効です。
よくある質問
Q. 人間関係を理由に退職する人は多いのですか?
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、転職した人が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた割合は男性9.0%、女性11.7%で、個人的な理由のなかでも上位に入ります。給料や労働条件と並ぶ主要な離職理由であり、特殊な理由ではありません。
Q. 上司と合わないのはハラスメントに当たりますか?
相性が悪いというだけでは該当しません。パワーハラスメントは、職場での優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境が害されるものを指します。人格を否定する発言、他の従業員の前での叱責、必要な情報を意図的に与えない、明らかに遂行不可能な業務の強制などは該当しうる行為です。判断に迷う場合は、全国の労働局・労働基準監督署内にある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。
Q. 人間関係が理由の退職は、失業保険で不利になりますか?
単に上司や同僚と合わないという理由であれば、通常は自己都合退職として扱われます。ただし、上司や同僚から故意の排斥やいじめ、著しい冷遇を受けたことが離職の理由である場合は、特定受給資格者に当たる可能性があります。該当するかどうかの判断はハローワークが行うため、経緯が分かる記録を持参して相談してください。記録は在職中のほうが集めやすいため、辞める前に残しておくことが重要です。