50代で仕事を辞めたいとき|統計で見る判断材料と、定年前の制度
50代の退職は、ほかの年代と決定的に違う点があります。定年と年金が視野に入っているため、退職日の設定そのものが金額に直結します。
この記事では、まず統計で50代前半と後半の違いを確認し、そのうえでこの年代でしか関係しない制度を整理します。
50代前半と後半で、状況が分かれる
厚生労働省の令和6年雇用動向調査から、転職した人の賃金の変動です。ここは正直に書きます。
| 年齢 | 増加 | 減少 | 差 |
|---|---|---|---|
| 50〜54歳 | 39.0% | 28.2% | +10.8ポイント |
| 55〜59歳 | 27.4% | 36.6% | −9.2ポイント |
| 全年齢平均 | 40.5% | 29.4% | +11.1ポイント |
55〜59歳は、全年齢で唯一、賃金が減少した人が増加した人を上回る層です。50〜54歳は全年齢平均に近い水準を保っているため、同じ50代でも前半と後半で状況が違います。
転職入職率は50〜54歳で男性5.1%・女性8.2%、55〜59歳で男性5.4%・女性7.6%。動く人は少なく、動いた場合の条件も後半では厳しくなるというのが統計の示すところです。
これは「辞めるな」という意味ではありません。条件が下がる可能性を織り込んだうえで判断する必要がある、ということです。とくに、辞めてから探す場合の生活費の見積もりは、他の年代より慎重にしてください。
この年代でしか関係しない制度
50代の判断で最も重要なのは、退職日をいつにするかで受け取れるものが変わるという点です。
退職金は、定年か自己都合かで変わることがある
退職金は法律上の義務ではなく、就業規則や退職金規程の定めによります。定年退職と自己都合退職で支給率が異なる規程は珍しくありません。また、勤続年数が長いため退職所得控除の額も大きくなります(勤続20年を超える部分は1年あたり70万円)。
退職金の相場/退職所得控除の計算方法
失業給付と老齢厚生年金は、同時に受けられない
基本手当と特別支給の老齢厚生年金には調整があり、同時には受給できません。年金の受給が始まる年齢にかかる場合、どちらを選ぶかで受取総額が変わります。事前に確認してください。
年金と失業給付は同時に受けられない/ねんきんネットで年金記録を確認する
65歳の前と後で、給付の種類が変わる
65歳未満の離職は基本手当の対象ですが、65歳以上の離職は高年齢求職者給付金という別の制度になり、一時金として支給されます。退職日の設定によって受け取れるものが変わるため、65歳が近い場合は先に確認してください。
65歳の前と後、どちらで辞めるか/高年齢求職者給付金
60歳以降の賃金低下には給付がある
定年後の再雇用などで賃金が下がった場合、高年齢雇用継続給付という制度があります。辞めるか、条件を下げて残るかを比べるときの材料になります。
高年齢雇用継続給付/定年後の再雇用|労働条件の引き下げと同日得喪/70歳までの就業確保措置
希望退職の募集に応じるかどうか
この年代では、募集や勧奨の対象になることがあります。応じるかどうかで、割増退職金の有無と失業給付の離職理由の扱いが変わります。退職勧奨に応じる義務はなく、その場で返事をする必要もありません。
希望退職の募集・早期退職優遇制度に応じたとき/退職勧奨に応じる義務はない
50代は、確認の順番で金額が変わる
他の年代以上に、辞める前の確認が金額に直結します。次の順で進めてください。
- 退職金規程を読む -- 定年と自己都合で差があるか、勤続年数の区切りがどこか
- 年金記録を確認する -- 受給開始の見込みと、失業給付との調整
- 失業給付の所定給付日数を確認する -- 離職理由と被保険者期間で変わります
- 退職日を決める -- 上の3つが分かってから決めます
条件が下がる可能性と、続ける負荷を比べる
統計を見ると、55歳以降の転職は条件面で厳しくなります。ただし、それは「続けるべき」という結論には直結しません。
比べるのは、下がりうる条件と、続けた場合に払う負荷です。心身に不調が出ているなら、この年代であっても優先順位は変わりません。在職中でなければ使えない制度があるため、順番だけは確認してください。
よくある質問
Q. 50代の転職では賃金が下がりますか?
年齢によって傾向が分かれます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査によれば、50〜54歳では賃金が増加した割合が39.0%、減少が28.2%で、増加が10.8ポイント上回っています。一方55〜59歳では増加27.4%に対し減少36.6%で、減少が9.2ポイント上回ります。全年齢で唯一、減少が増加を上回る層です。50代前半と後半では状況が異なるため、同じ50代でも分けて考える必要があります。
Q. 定年前に辞めると、退職金や年金で不利になりますか?
退職金は就業規則や退職金規程の定めによるため、まず規程の確認が必要です。定年退職と自己都合退職で支給率が異なる規程は珍しくありません。年金については、厚生年金の加入期間が短くなればその分将来の年金額に影響します。また、失業給付(基本手当)と老齢厚生年金は同時に受けられない調整があるため、受給を予定している場合は先に確認してください。
Q. 65歳より前と後では、退職時の給付が変わりますか?
変わります。65歳未満で離職した場合は基本手当の対象となり、所定給付日数は離職理由・年齢・被保険者期間で決まります。65歳以上で離職した場合は高年齢求職者給付金という別の制度になり、一時金として支給されます。どちらが有利かは被保険者期間や離職理由によって変わるため、65歳前後で退職を考えている場合は、退職日の設定によって受け取れるものが変わる点を確認してください。