高年齢雇用継続給付|60歳以降に賃金が下がったとき
定年後に再雇用されて、同じ会社で働き続けているのに賃金だけが大きく下がる。 このときに雇用保険から支給されるのが高年齢雇用継続給付です。退職ではなく働き続ける人のための給付で、失業したときの基本手当とはまったく別の制度です。
このページで参照している資料
- 雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号、令和7年4月1日施行)
- ハローワーク 雇用継続給付
- 厚生労働省・ハローワーク 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について(PL070801保05)
- 日本年金機構 年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整
- 厚生労働省 令和8年8月1日からの基本手当日額等の適用について
2種類ある
高年齢雇用継続基本給付金
基本手当を受けずに、60歳以降も働き続ける場合の給付。 支給対象期間は60歳に達した月から65歳に達する月までです。
高年齢再就職給付金
基本手当を受給したうえで60歳以後に再就職した場合の給付。再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あることが条件に加わります。支給期間は、支給残日数が200日以上なら最大2年、100日以上なら最大1年。 いずれも65歳に達する日までが限度です。
再就職手当とは併給できない
厚生労働省のリーフレットは、雇用保険法第61条の2第4項の規定により、同一の就職につき、高年齢再就職給付金の支給を受けた場合には再就職手当が、 再就職手当の支給を受けた場合には高年齢再就職給付金が支給されませんとしています。どちらか一方が支給されるともう一方は受けられなくなるため、選択は慎重に行ってください。 なお、再就職手当を申請して審査の結果が不支給だった場合は、 高年齢再就職給付金の支給要件を満たしていれば申請できます。 再就職手当そのものについては再就職手当で解説しています。
受給の要件
1. 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
60歳時点で5年に満たない場合は、5年となるに至った月からが支給対象期間になります
2. 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
支給対象期間は60歳に達した月から65歳に達する月までです
3. 60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下していること
低下率がこの水準に届かない月は支給されません
令和7年4月から給付率が縮小された
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)が令和7年4月1日に施行され、給付率が下がりました。どちらが適用されるかは、60歳に達した日で決まります。60歳時点で被保険者期間が5年に満たなかった方は、5年以上となった日が基準になります。
| 改正前の扱い | 改正後の扱い | |
|---|---|---|
| 対象 | 令和7年3月31日以前に60歳に達した日を迎えた方 | 令和7年4月1日以降に60歳に達した方 |
| 最大の給付率 | 各月の賃金の15%相当額 | 各月の賃金の10%相当額 |
| 最大給付率になる低下率 | 60歳時点の賃金の61%以下 | 60歳時点の賃金の64%以下 |
| 逓減する範囲 | 61%超75%未満 | 64%超75%未満 |
| 年金の支給停止額(月額) | 最高で標準報酬月額の6% | 最高で標準報酬月額の4% |
支給額の計算
ハローワークが挙げている例をそのまま引きます。
60歳時点の賃金が月額30万円だった場合
- 60歳以後の各月の賃金が18万円に低下 → 低下率は60%
- 64%以下なので給付率は10%
- 支給額 18万円 × 10% = 1万8千円(月額)
低下率が64%を超えて75%未満の範囲では、支給率が段階的に下がります。 厚生労働省のリーフレットに載っている対応表は次のとおりです (令和7年4月1日以降に60歳に達した方に適用される率)。
| 賃金の低下率 | 支給率 |
|---|---|
| 75.00%以上 | 0.00% |
| 74.50% | 0.39% |
| 74.00% | 0.79% |
| 73.50% | 1.19% |
| 73.00% | 1.59% |
| 72.50% | 2.01% |
| 72.00% | 2.42% |
| 71.50% | 2.85% |
| 71.00% | 3.28% |
| 70.50% | 3.71% |
| 70.00% | 4.16% |
| 69.50% | 4.60% |
| 69.00% | 5.06% |
| 68.50% | 5.52% |
| 68.00% | 5.99% |
| 67.50% | 6.46% |
| 67.00% | 6.95% |
| 66.50% | 7.44% |
| 66.00% | 7.93% |
| 65.50% | 8.44% |
| 65.00% | 8.95% |
| 64.50% | 9.47% |
| 64.00%以下 | 10.00% |
支給限度額に注意
支給対象月に支払われた賃金の額が支給限度額以上のときは支給されません。 支給限度額は令和8年8月1日以降397,369円(それ以前は386,922円)です。 賃金額と給付額の合計が支給限度額を超えるときは、 支給限度額から賃金額を引いた額が給付額になります。この額は毎年8月1日に変更されます。
また、算定した支給額が一定の額を超えない場合も支給されません。 令和7年8月版のリーフレットではこの額を2,411円としたうえで、 令和8年7月31日までの額であり毎年8月1日に改定されると注記しています。
手続き
支給申請は原則として2か月に一度、 事業所の所在地を管轄するハローワークに提出します。提出者は事業主ですが、 本人が自ら申請手続を行うことを希望する場合は本人が申請することもできます。
初回の支給申請は、最初に支給を受けようとする支給対象月の初日から起算して4か月以内です。 2回目以降は、ハローワークから交付される 「高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書」に印字された支給申請月に行います。 初回の申請には雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書の添付が必要です。
年金が一部止まる
65歳になるまでの老齢厚生年金を受けながら厚生年金保険に加入している方がこの給付を受けるときは、在職老齢年金による支給停止に加えて、年金の一部が止まります。 支給停止額は最高で標準報酬月額の4%にあたる額です。
年金月額10万円の方の賃金が35万円から20万円に下がった場合(日本年金機構の計算例)
- 高年齢雇用継続給付 20万円 × 10% = 2万円
- 年金の支給停止額 標準報酬月額20万円 × 4% = 8千円
- 在職による年金の支給停止額 0円
- 受け取り合計 賃金20万円 + 年金9.2万円 + 給付2万円 = 月31.2万円
申請しない月があっても停止は続く
日本年金機構が注意事項として挙げている点です。初回の支給申請が認められた場合、その後に支給申請を行わなかったときでも、 支給申請が可能である期間中は老齢年金の一部支給停止が解除されません。退職したとき、65歳に到達したとき、不支給決定等の雇用情報が提供されたときは、 さかのぼって解除され、申請しなかった期間の年金が支払われます。
よくある質問
Q. 失業保険(基本手当)と両方もらえますか?
高年齢雇用継続基本給付金は、働き続けている人が受けるものです。 失業して基本手当を受ける状態とは両立しません。 基本手当を受けたうえで60歳以後に再就職した場合は、高年齢再就職給付金の対象になります。 ただし同一の就職について再就職手当の支給を受けた場合は、高年齢再就職給付金は支給されません(雇用保険法61条の2第4項)。
Q. 65歳を過ぎても受けられますか?
受けられません。支給対象期間は65歳に達する月までです。 65歳以降に離職した場合は高年齢求職者給付金という別の給付の対象になります。
Q. 賃金が下がる前に確認しておくことは?
再雇用の労働条件が提示されたら、賃金が60歳時点の何%になるかを計算してください。 75%を下回るかどうかが分かれ目です。 また、この給付を受けると年金の一部が止まるため、給付額と年金の停止額の差し引きで手取りを見る必要があります。労働条件の提示については定年後の再雇用で整理しています。