在職老齢年金|2026年4月から基準額が65万円に
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受けている60歳以上の方は、 賃金と年金の合計額に応じて年金の一部または全部が止まります。これが在職老齢年金です。令和8年(2026年)4月から、この分かれ目になる額が月51万円から65万円に引き上げられました。働きながら年金を受け取っていて、これまで一部が止まっていた方は、支給額が変わっている可能性があります。
このページで参照している資料
- 令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)
- 日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
- 日本年金機構 在職老齢年金制度が改正されました
- 日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み(LK39)
2026年4月に何が変わったか
日本年金機構は改正の趣旨について、平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の方の活躍を後押しし、 より働きやすい仕組みとすることと説明しています。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 基準額(支給停止調整額) | 51万円(令和7年度) | 65万円(令和8年度) |
| 全額支給される条件 | 基本月額+総報酬月額相当額 ≦ 51万円 | 基本月額+総報酬月額相当額 ≦ 65万円 |
| 超えたときの支給停止額(月額) | (基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2 | (基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2 |
| 適用時期 | 令和8年3月以前 | 令和8年4月以降 |
計算式そのものは変わっていません。差し引く額が51万円から65万円になったため、 同じ賃金・同じ年金額でも支給停止額が小さくなるか、ゼロになります。
計算に使う3つの用語
基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額。共済組合等からの老齢厚生年金も受け取っている場合は、すべての老齢厚生年金を合わせた年金額を12で割った額
総報酬月額相当額
その月の標準報酬月額に、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したもの。70歳以上の方の場合はそれぞれ「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」
支給停止調整額
全額支給されるかどうかの分かれ目になる額。令和8年度は65万円。毎年度、賃金の変動に応じて改定される
計算方法
令和8年度の計算式
- 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下 → 全額支給
- 基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える → 支給される月額は基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2
日本年金機構のリーフレットに載っている計算例をそのまま引くと、次のようになります。
老齢厚生年金額120万円(基本月額10万円)、総報酬月額相当額58万円の場合
- 基本月額 120万円 ÷ 12 = 10万円
- 合計 58万円 + 10万円 = 68万円(65万円を超える)
- 支給停止額(年額) (58万円 + 10万円 - 65万円)× 1/2 × 12 = 18万円(月額1.5万円)
- 年金支給額 120万円 - 18万円 = 102万円(月額8.5万円)
この例の総報酬月額相当額58万円は、標準報酬月額47万円と標準賞与額132万円(月額11万円)の合計です。
止まるのは老齢厚生年金だけ
誤解が多いところです。日本年金機構は「在職による支給停止は老齢厚生年金に対して行われるもので、老齢基礎年金は支給停止の対象とはなりません」と明記しています。
計算に使う基本月額も、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額です。加給年金額そのものは基本月額に含めません。
上の計算例の方が老齢基礎年金を月額7万円受け取っている場合、 老齢基礎年金は全額支給され、賃金・賞与58万円、老齢厚生年金8.5万円と合わせて月73.5万円になります。
70歳以降も対象になる
厚生年金保険の適用事業所に勤める70歳未満の方は、年金を受けていても厚生年金に加入することになっています。 ただし一定の要件に満たない短時間労働者などは加入対象から除かれます。
70歳を過ぎると厚生年金保険の被保険者ではなくなりますが、平成19年4月以降に70歳に達した方が70歳以降も適用事業所に勤務している場合は、在職による支給停止が行われます。共済組合等に加入している方、議員である方も同様です。
高年齢雇用継続給付を受けているとき
60歳以上65歳未満で高年齢雇用継続給付を受けている方が65歳になるまでの老齢厚生年金を受けている場合、在職による支給停止に加えて、最高で標準報酬月額の4%にあたる額がさらに止まります。
令和7年3月31日以前に60歳に到達している方や再就職した方は、給付が賃金額の最高15%、 年金の支給停止額は標準報酬月額の最高6%になります。
よくある質問
Q. 65万円という額はずっと変わりませんか?
変わります。65万円は令和8年度の額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されると 日本年金機構が明記しています。実際、改正前の51万円も年度ごとに動いていました。 手続きの前には最新の額を確認してください。
Q. 定年後に再雇用されて賃金が下がりました。年金はどうなりますか?
総報酬月額相当額が下がるので、支給停止額も小さくなります。ただし標準報酬月額は 通常、年に1度の定時決定などでしか変わらないため、下がった賃金がすぐに反映されるとは限りません。 60歳以上で退職した後、1日も空けずに同じ会社に再雇用された場合は、資格喪失と資格取得を同時に届け出ることで 再雇用された月から新しい賃金に応じた標準報酬月額に決め直せます。手続きは定年後の再雇用と同日得喪で解説しています。
Q. 賞与があると不利になりますか?
総報酬月額相当額には、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額が含まれます。 賞与を受け取った月だけでなく、その後1年間の計算に影響します。 月給が同じでも賞与の有無で支給停止額が変わるのはこのためです。