生活相談員は、施設の中でもっとも多くの書類に触れる職種です。契約書、重要事項説明書、相談記録、家族との連絡票、関係機関とのやりとり。辞めるときに整理すべき対象が、他の職種より多くなります。
記録は施設のもの、個人のものではない
相談記録は、施設が保存義務を負う書類です。運営基準により、サービスの提供に関する記録は一定期間保存することが定められており、保存すべき年数は自治体の条例によって異なります。自分の施設が何年としているかは、管理者に確認してください。
自分が書いた記録であっても、持ち帰ることはできません。個人のノートや手帳に書いたメモも、利用者の氏名や状況が書かれていれば個人情報です。
個人のメモを、正式な記録に移す
相談員は、面談中に手元のメモを取り、後で記録に起こすという流れで働きます。ここで、メモにしか残っていない情報が生まれます。
- 家族が言った言葉のニュアンス
- まだ方針が決まっていない、検討中の事柄
- 関係機関の担当者の人柄や、連絡がつく時間帯
正式な記録に書ける範囲は記録に移し、書けないもの(判断の背景など)は引き継ぎ書に整理してください。メモのまま持ち帰るのが、いちばんよくない形です。
引き継ぎ書に何を書くか
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 利用者ごとの状況 | 家族構成、キーパーソン、連絡がつく時間帯 |
| 対応の経緯 | 過去に何を言われ、どう答えたか |
| 進行中の案件 | 入退所の調整、苦情対応、検討中の支援 |
| 関係機関 | ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関の担当者 |
| 書類の保管場所 | 契約書、重要事項説明書、記録の場所と鍵の管理 |
| 年間の流れ | 契約更新の時期、行事、指導・監査の時期 |
手順は書けば伝わりますが、「なぜそうしているか」は書かなければ消えます。後任がいちばん困るのは、判断の背景です。
契約書類の確認
契約書と重要事項説明書は、施設と利用者の関係の根拠になる書類です。退職前に、次を確認しておくと後任が助かります。
- 全利用者分がそろっているか
- 更新が必要なものが残っていないか
- 署名や押印の漏れがないか
指導・監査で最初に見られるのがこの部分です。自分が担当していた期間の抜けは、自分が在職しているうちに直すのが早く済みます。
持ち出してはいけないもの
- 利用者の氏名、住所、家族構成が書かれた書類やメモ
- 相談記録、アセスメントの記録
- 携帯電話に登録した利用者・家族の連絡先
- 業務で使った端末のデータ
個人情報保護法は、個人データの適正な取扱いを事業者に求めています。退職者が持ち出した場合、施設が管理責任を問われるだけでなく、持ち出した本人が責任を問われることもあります。
守秘義務は退職後も続く
介護保険法や運営基準は、事業者とその従業者に、業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならないと定めています。この義務は退職しても消えません。
地域が狭いほど、名前を出さなくても本人にたどり着きます。前の職場の話をするときは、利用者が特定できる形にしないでください。
退職後に問い合わせが来たら
後任や施設から「あの件はどうなっていたか」と連絡が来ることがあります。答えられる範囲で協力するのは構いませんが、記憶で答えると誤りが混ざります。
「記録に残しているので、そちらを見てほしい」と言える状態にしておくことが、いちばんの引き継ぎです。
まとめ
- 記録は施設のもの。自分が書いたものでも持ち帰らない
- 個人のメモにしかない情報を、記録と引き継ぎ書に移す
- 契約書類の抜けは、在職中に直すほうが早い
- 守秘義務は退職後も続く