通所介護や小規模な施設では、生活相談員が1人だけということが珍しくありません。引き継ぐ相手がいない状態で辞めるのは、後任に渡すのではなく「残す」作業になります。
引き継ぎ相手がいなくても、書けるものは書く
後任が決まっていなくても、引き継ぎ書は作れます。むしろ、相手が決まっていないときほど、読めば分かる形にしておく必要があります。
書いておくもの。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 利用者ごとの状況 | 家族構成、キーパーソン、連絡がつく時間帯 |
| 家族対応の経緯 | 過去に何を言われ、どう答えたか |
| 関係機関 | 担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療機関の窓口と担当者名 |
| 書類の場所 | 契約書、重要事項説明書、相談記録の保管場所 |
| 年間の流れ | 契約更新の時期、行事、運営指導や監査の時期 |
| 稼働の状況 | 現在の登録者数、空き状況、待機の有無 |
「誰に聞けばいいか」が分かるだけでも、残された人の負担は大きく変わります。
記録は個人のノートに残さない
1人職場では、相談記録が個人の手帳やメモに書かれたままになりがちです。退職時にこれを持ち帰ると、施設には何も残りません。
- 手帳のメモを、正式な記録に転記する
- 転記できないものは、引き継ぎ書に整理して書く
- 個人情報が書かれたメモは、施設の管理下に置くか、施設の手順に従って処分する
「後任が決まるまで」に期限を切る
1人職場の退職では、「後任が決まるまで待ってほしい」と言われることが多くなります。これは期限のない引き延ばしになりがちです。
次のように区切ると、話が前に進みます。
- 1 退職日を先に決めて、書面で伝える
- 2 その日までにできる引き継ぎの範囲を、具体的に示す
- 3 進捗を記録で共有する
「いつまでに何を残すか」を自分から出すと、引き止めの理由が薄くなります。
辞める時期の選び方
1人職場では、時期の選び方で残される人の負担が変わります。
- 監査や実地指導(現在は運営指導と呼ばれます)の直前は避ける
- 年度替わりの契約更新の集中期を避ける
- 月末での退職にすると、月ごとの締めが整理しやすい
ただし、体調を崩している場合は、時期の調整を優先しないでください。時期を待つ間に働けなくなるほうが、施設にとっても影響が大きくなります。
引き止めが強いとき
1人職場ほど、引き止めは強くなります。よく言われることと、その扱いを整理します。
| 言われること | 考え方 |
|---|---|
| 「基準を満たせなくなる」 | 人員を確保するのは事業者の責任 |
| 「利用者が困る」 | 事業者が後任を立てて対応する話 |
| 「後任が決まるまで」 | 期限のない条件は受けない |
| 「損害賠償を請求する」 | 退職しただけで賠償責任が生じるのは例外的。相談窓口へ |
退職の自由は民法627条1項で認められています。期間の定めのない雇用契約であれば、申し入れから2週間で契約は終了します。実務上は就業規則の期限に沿うのが穏当ですが、期限のない引き延ばしに応じる義務はありません。
誰にも相談できないとき
1人職場は、職場の中に同じ立場の人がいません。次のような外の相談先があります。
- 都道府県や市の社会福祉協議会
- 職能団体(社会福祉士会など)
- 自治体の労働相談窓口、労働基準監督署
職場の中だけで抱えていると、辞める判断まで1人で背負うことになります。
まとめ
- 後任が決まっていなくても、読めば分かる引き継ぎ書は作れる
- 個人のノートに残っている記録を、正式な記録に移す
- 「後任が決まるまで」は期限を切る
- 体調を崩しているなら、時期の調整より退職を優先する