退職証明書は請求すればもらえる
転職先から「退職証明書を出してください」と言われて、 そんな書類はもらっていないと気づくことがあります。 退職証明書は退職時に自動的に配られるものではなく、労働者が請求して初めて交付される書類です。 そして請求されれば、会社は交付しなければなりません。
このページで参照している法令・資料
- 労働基準法22条1項〜4項(退職時等の証明)
- 労働基準法23条1項(金品の返還)
- 所得税法226条1項(源泉徴収票)
- 厚生労働省 全国労働基準監督署の所在案内
条文が定めていること
労働基準法22条1項(退職時等の証明)
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由 (退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、 使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
ポイントは2つです。 ひとつは「請求した場合においては」という条件で、 黙っていても発行されるものではありません。 もうひとつは「遅滞なく」交付する義務があることで、 会社の裁量で断れるものではありません。
退職してから時間が経っていても請求できます。 在職期間の証明が必要になったときに、改めて請求して構いません。
証明を請求できる5つの事項
| 事項 | 使われる場面 |
|---|---|
| 使用期間 | いつからいつまで在籍していたか。職歴の確認や、加入期間の確認に使われます |
| 業務の種類 | どのような業務に従事していたか。実務経験を示す場面で使われます |
| その事業における地位 | 役職や職位。管理職としての経験を示す場合など |
| 賃金 | 支払われていた賃金。金額を知られたくない場合は請求しないという選択ができます |
| 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む) | 自己都合か会社都合か。手続き上、退職の事実と理由の確認を求められる場面で使われます |
これらはすべてを請求しなければならないものではありません。 必要な項目だけを選んで請求できます。
請求していない事項は書いてはいけない
労働基準法22条3項は、前二項の証明書には労働者の請求しない事項を記入してはならないと定めています。
この規定があるため、たとえば賃金額を知られたくない場合は賃金を請求しない、 退職理由を書かれたくない場合は退職の事由を請求しない、という選択ができます。 転職先から提出を求められている場合は、先方が何を確認したいのかを聞いてから必要な項目を請求してください。
さらに22条4項は、使用者があらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、 労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、 又は証明書に秘密の記号を記入してはならないと定めています。
解雇された場合は「解雇理由証明書」
労働基準法22条2項は、労働者が解雇の予告がされた日から退職の日までの間において当該解雇の理由について証明書を請求した場合、 使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。
ただし同項ただし書に注意が必要です。解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、 使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しないとされています。 解雇の理由に納得がいかない場合は、退職の日までに請求してください。
自己都合か会社都合かは失業保険の給付制限や給付日数に影響します。違いは自己都合退職と会社都合退職の違いで解説しています。
離職票・源泉徴収票との違い
| 書類 | 発行元 | 根拠 | 使いみち |
|---|---|---|---|
| 退職証明書 | 会社 | 労働基準法22条1項 | 転職先の入社手続き、国民健康保険・国民年金の切替など |
| 離職票 | ハローワーク(会社の手続きを経て交付) | 雇用保険法施行規則 | 失業保険(基本手当)の受給手続き |
| 健康保険資格喪失証明書 | 会社または健康保険の保険者 | — | 国民健康保険への加入手続き |
| 源泉徴収票 | 会社 | 所得税法226条1項 | 転職先の年末調整、確定申告 |
離職票は会社の手続きを経てハローワークから交付されるため時間がかかります。 国民健康保険や国民年金の切替には期限があるため、 離職票を待っている間に手続きが必要な場合、退職証明書で代えられることがあります。 扱いは自治体によって異なるので、窓口に確認してください。
切替の期限は退職後の国民年金の切替は14日以内、健康保険の選択肢は退職後の健康保険は3択をご覧ください。
請求のしかた
- 証明してほしい事項を決める(請求しない事項は記載されません)
- 人事・総務の担当部署に、記録が残る方法で請求する
- いつまでに必要かを伝える(22条1項は「遅滞なく」と定めています)
- 受け取ったら、記載内容が事実と合っているかを確認する
会社が対応しない場合は、労働基準法違反に関する窓口である労働基準監督署に相談してください。 退職時の賃金・金品の精算については退職時の給与・貸与品の精算にまとめています。
よくある質問
Q. 退職証明書に決まった様式はありますか?
労働基準法22条は証明すべき事項を定めていますが、 書式そのものを法定しているわけではありません。 会社ごとに様式が用意されていることが多いので、まず担当部署に確認してください。 重要なのは、請求した事項が正確に記載されていること、 請求していない事項が記載されていないことです。
Q. 何年前に辞めた会社にも請求できますか?
22条1項は請求できる期間を限定していません。 ただし労働基準法109条は労働者名簿や賃金台帳などの保存義務を定めており、 その期間は5年(同法附則143条1項により当分の間3年)です。 時間が経つほど会社側に記録が残っていない可能性が高まります。 必要になる見込みがあるなら、早めに請求しておくほうが確実です。
Q. 記載内容が事実と違いました
会社に訂正を求めてください。 特に退職の事由については、自己都合か会社都合かで失業保険の扱いが変わります。 離職票の離職理由については本人が異議を申し立てる欄があり、 ハローワークに申し出ることができます。
Q. 退職代行を使った場合も請求できますか?
請求できます。労働基準法22条1項は労働者の請求に基づく交付義務を定めており、 退職の伝え方によって左右されるものではありません。 退職代行を使った場合の書類の届き方は退職代行を使った後の書類をご覧ください。