退職後の健康保険
退職すると、それまでの健康保険の資格は退職日の翌日に失われます。 次の勤務先の健康保険に間を空けずに入る場合を除き、 任意継続・国民健康保険・家族の被扶養者のいずれかを自分で選んで手続きする必要があります。
期限が違うので先に決めておく
任意継続は20日以内、 国民健康保険は14日以内。 とくに任意継続は20日を過ぎると加入できなくなります。 どちらが安いかを退職後に調べ始めると間に合わないことがあるため、在職中に比較しておくのが安全です。
3つの選択肢
1. 家族の被扶養者になる
- 期限
- 勤務先の手続きによる(速やかに)
- 手続先
- 家族の勤務先
- 保険料
- 負担なし
- 注意点
- 収入要件を満たす必要がある。失業保険の基本手当も収入に含まれる
2. 任意継続被保険者
- 期限
- 退職日の翌日から20日以内
- 手続先
- 協会けんぽ支部または健康保険組合
- 保険料
- 退職時の標準報酬月額 × 保険料率(全額自己負担)
- 注意点
- 加入できるのは2年間。標準報酬月額に上限がある
3. 国民健康保険
- 期限
- 退職日の翌日から14日以内
- 手続先
- 市区町村役場
- 保険料
- 前年の所得と世帯構成による(市区町村ごとに異なる)
- 注意点
- 倒産・解雇・雇い止めによる離職なら軽減制度がある
まず扶養に入れるかを確認する
家族の被扶養者になれるなら、保険料の負担がないため最も有利です。 ほかの2つは必ず保険料がかかるので、まずここを確認します。
注意点は、失業保険の基本手当も収入に含まれることです。 退職後に失業保険を受け取る予定なら、その分を含めて収入要件を満たすかどうかを判断します。 給付制限期間中は扶養に入り、受給が始まったら抜けるという運用になることもあります。
収入の基準額と判定方法は配偶者・家族の扶養に入る条件で解説しています。
任意継続の保険料は在職中の約2倍が目安
任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に都道府県の保険料率を乗じた額です。 在職中は事業主と本人で半分ずつ負担していましたが、退職後は本人が全額負担します。 そのため、給与明細で見ていた控除額のおよそ2倍になるのが目安です。
標準報酬月額には上限がある
退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、 32万円の標準報酬月額で計算します(令和7年3月分までは30万円)。 在職中の給与が高かった人ほど、この上限のおかげで負担が抑えられます。
出典:協会けんぽ「保険料について(健康保険任意継続制度)」。健康保険組合に加入していた場合は、組合ごとに取扱いが異なることがあります。
加入できる期間は2年間です。保険料は原則2年間変わりません (年齢到達・保険料率の変更・上限額の変更・転出があった場合を除く)。
手続きの詳細は任意継続の申請期限20日と保険料の計算をご覧ください。
国民健康保険は前年の所得で決まる
国民健康保険の保険料(税)は、前年の所得と世帯構成をもとに市区町村が算定します。 計算方法や料率は市区町村ごとに違うため、全国一律の目安はありません。
退職した年は前年の所得(在職中の給与)で計算されるため、 収入がなくなっているのに保険料が高い、という状況になりがちです。 金額を知りたい場合は、市区町村の国民健康保険担当窓口に前年の源泉徴収票を持参して試算してもらうのが確実です。
参考:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
倒産・解雇なら国保が安くなる(軽減制度)
自分の意思ではない理由で離職した場合、国民健康保険料(税)の軽減措置があります。
対象になる人
- 雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇などにより離職した方)
- 雇用保険の特定理由離職者(雇い止めなどにより離職した方)
軽減の内容
離職時からその翌年度末までの間、前年所得の給与所得を100分の30として算定します。 高額療養費等の所得区分の判定についても同様に取り扱われます。
前年の給与所得が3割として扱われるため、保険料は大きく下がります。 この軽減があると、任意継続より国民健康保険の方が安くなるケースが多くなります。
出典:厚生労働省「倒産などで職を失った失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置」。申請が必要な制度なので、市区町村の窓口で離職理由を伝えてください。
自分が特定受給資格者・特定理由離職者にあたるかは自己都合退職と会社都合退職の違いで確認できます。
比較して決める手順
ステップ1:扶養に入れるかを確認する(在職中に)
家族の勤務先に収入要件を確認します。入れるなら保険料の負担がないため他を検討する必要はありません。
ステップ2:任意継続の保険料を確認する(在職中に)
退職時の標準報酬月額がわかれば計算できます。協会けんぽの支部に問い合わせるか、給与明細の健康保険料の約2倍を目安にします。
ステップ3:国民健康保険の保険料を試算してもらう(在職中に)
市区町村の窓口で前年の源泉徴収票を見せて試算を依頼します。離職理由が倒産・解雇・雇い止めなら軽減後の額で試算してもらいます。
ステップ4:安い方を選んで期限内に手続きする
任意継続は20日以内、国民健康保険は14日以内。任意継続を選ぶ場合は郵送でも20日以内必着です。
扶養に入れる人は保険料がかからないので比較の必要がありません。 それ以外の人は、離職理由によって答えが変わります。
手続きに必要な書類
- 健康保険資格喪失証明書(退職した会社から交付されます)
- 退職証明書または離職票
- マイナンバーカード(ない場合は個人番号確認書類と運転免許証など)
- 国民健康保険の軽減を申請する場合は雇用保険受給資格者証など
資格喪失証明書が届かないと手続きが進みません。 退職前に、いつ交付されるかを人事に確認しておくとスムーズです。