開業を理由に退職する場合、通常の転職とは別に確認すべき点があります。
契約書の競業避止条項
雇用契約書や誓約書に、退職後一定期間・一定範囲で競合する医療機関を開設しない旨の条項が入っていることがあります。
こうした条項が常に有効というわけではありません。裁判では、期間・地域・対象業務の範囲、代償措置の有無などから、合理的な範囲かどうかが判断されます。職業選択の自由を過度に制限する内容は、無効と判断されることがあります。
契約書に競業避止の定めがある場合は、開業地を決める前に弁護士に相談してください。「無効になることが多い」という一般論だけで進めるのは危険です。
患者への声かけ
在職中に、自分の開業先へ患者を誘導する行為はトラブルの原因になります。在職中は勤務先の医師として診療している立場です。
退職後に患者が自分の判断で受診することは自由ですが、在職中の勧誘は避けるのが安全です。
持ち出してはいけないもの
- 患者リスト、カルテのコピー、検査データ
- 院内で作成した診療マニュアルや資料
- 職員の連絡先
患者情報の持ち出しは、勤務先の規程違反であると同時に個人情報保護法上の問題になります。開業準備で必要な情報は、自分で一から作ってください。
退職時期の考え方
開業には保健所への開設届、地方厚生局への保険医療機関の指定申請など、複数の手続きが必要です。指定の効力が発生する時期は申請の時期に左右されるため、開業予定日から逆算した計画が必要です。
手続きのスケジュールは管轄によって運用が異なります。開業予定地の保健所と地方厚生局に、早い段階で直接確認してください。
在職中にどこまで準備できるか
物件探しや資金調達の相談など、勤務先の業務に支障のない範囲での準備は一般に問題になりません。ただし、
- 勤務時間中に開業準備を行う
- 勤務先の設備・備品を使う
- 同僚を引き抜く
これらは在職中の義務との関係で問題になり得ます。線引きに迷う場合は、勤務先に開業予定を伝えたうえで進めるほうが結果的に安全です。