医師の引き継ぎは、担当患者の診療の継続性に直結します。事務的な業務の引き継ぎとは重みが違います。

担当患者の引き継ぎ

継続診療が必要な患者

  • 現在の診断名・治療方針・次回予定
  • 使用中の薬剤と、変更してきた経緯
  • 検査の予定とその目的
  • 患者・家族に説明済みの内容と、まだ話していない内容

「なぜ今この方針なのか」がカルテから読み取れる状態にしておくことが最大の引き継ぎです。後任医師が判断をやり直さずに済みます。

他院へ移る患者

紹介状(診療情報提供書)が必要な患者を洗い出し、退職日までに書き終える計画を立てます。人数が多い場合は、退職の1〜2か月前から少しずつ準備します。

患者への伝え方

退職を患者にいつ伝えるかは、勤務先と相談して決めます。独断で先に伝えると、外来の混乱や苦情につながることがあります。病院側の説明のタイミングに合わせるのが無難です。

診療以外の業務

医師は診療以外の役割を兼務していることが多く、これも引き継ぎ対象です。

  • 当直・オンコールのシフト
  • 病棟・診療科のカンファレンス運営
  • 院内委員会(感染対策、医療安全、輸血療法など)の委員
  • 臨床研修医・専攻医の指導担当
  • 治験・臨床研究の分担医師
  • 学会発表・論文の共同執筆

治験や臨床研究に関わっている場合は、退職の予定が決まった時点で早めに責任医師へ伝えてください。分担医師の変更手続きが必要になります。

カルテと個人情報

  • 引き継ぎ資料は院内のシステムで作成・保管する
  • 患者情報を私物のPCやクラウド、USBメモリに持ち出さない
  • 退職後に患者・家族の連絡先を保有しない

医療情報の持ち出しは、勤務先の規程違反になるだけでなく、個人情報保護法上の問題にもなります。

未使用の有給休暇との調整

引き継ぎと有給消化は同時に進みません。退職日から逆算して、いつまでに引き継ぎを終えるかを先に決めてから、有給の消化計画を立ててください。