医師の退職は、他の職種と比べて後任の確保に時間がかかります。常勤医が1人抜けると外来枠・当直・病棟管理の全てに影響が出るため、申し出の時期は早いほど話し合いがしやすくなります。
法律上はいつまでに言えばよいか
期間の定めのない雇用契約であれば、民法627条1項により、申し入れから2週間で契約は終了します。
民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり法律上の下限は2週間です。ただし医師の場合、2週間で引き継げる業務はほとんどありません。
実務上の目安
| 立場 | 申し出の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 常勤医 | 3〜6か月前 | 後任の公募・面談・着任まで時間がかかる |
| 医長・部長職 | 6か月〜1年前 | 診療科の体制そのものを組み直す必要がある |
| 非常勤(週1〜2日) | 1〜3か月前 | 外来枠の振り替え先を探す期間 |
| 有期契約 | 契約期間の満了に合わせる | 期間途中は原則として合意が必要 |
年度替わり(3月末)に合わせる慣行が根強い領域です。大学医局から派遣されている場合は、医局の人事サイクルと切り離せません。
有期契約の場合は扱いが違う
1年契約などの有期契約では、期間の途中で一方的に辞めることは原則できません。民法628条は「やむを得ない事由」があるときに限って解除を認めています。
年俸制の常勤医は有期契約になっていることが少なくありません。契約書で契約期間と更新条項を必ず確認してください。
医局人事がある場合
大学医局からの派遣で勤務している場合、退職の話は勤務先だけで完結しません。医局への相談を先に行うのが通例です。順序を誤ると、後任派遣の調整が難しくなります。
ただし医局の人事は法的な拘束力を持つものではありません。最終的に労働契約の当事者は医師本人と勤務先の医療機関です。
応召義務は退職を妨げない
医師法19条1項の応召義務は、診療に従事する医師が正当な事由なく診療を拒んではならないという規定です。
医師法19条1項
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
これは医師個人が特定の医療機関を辞められないという意味ではありません。退職後は、その医療機関の診療に従事する医師ではなくなります。引き止めの根拠としてこの条文を持ち出された場合は、退職の自由とは別の話であることを押さえておいてください。