送迎は、放課後等デイサービスの業務の中でも緊張の高い場面です。車内での子ども同士のトラブル、車両の接触、乗降時のけが。事故のあとは、続ける自信そのものが崩れます。

辞めるかどうかを決める前に、先にやっておくべきことがあります。

まず、報告を残す

事故やヒヤリハットは、事業所に報告し、記録に残してください。辞めるつもりだから黙っておく、という判断がいちばん危険です。

  • いつ、どこで、何が起きたか
  • そのときの自分の行動、車内の状況
  • 子どものけがの有無と、その後の対応
  • 誰に、いつ報告したか

障害福祉サービス等の事故については、事業所が自治体へ報告することが求められています。報告の様式や期限は自治体ごとに定められているため、事業所の手続きに沿って進めてください。

記録が残っていないと、後から「あのとき何があったのか」を誰も説明できなくなります。

保護者への説明は事業所が行う

事故の説明は、事業所として行うものです。自分だけで謝罪や説明に行かないでください。説明の内容が事業所の記録と食い違うと、後で保護者との関係がこじれます。

自分が話す場面があるときも、事実を述べるにとどめ、責任の所在について個人的な判断を口にしないでください。

個人が賠償を負うのか

子どもや第三者に損害が生じた場合、まず責任を負うのは事業者です。従業者の行為によって生じた損害について、事業者が使用者として責任を負う仕組みがあります(民法715条1項)。

多くの事業所は損害賠償保険や自動車保険に加入しています。「あなたが払って」と言われたときは、その場で支払いを約束せず、保険の適用を確認してください。

故意や重大な過失があった場合には個人の責任が問われることもありますが、これは事情によって判断が分かれます。金額の話が出たら、労働基準監督署や自治体の労働相談窓口、法テラスなどに相談してから対応してください。

自分がけがをした場合

送迎中のけがは、業務中の災害として労災保険の対象になる可能性があります。

場面扱われ方
送迎車の運転中・乗降介助中業務上の災害として扱われることが多い
事業所と学校・自宅の間の移動業務に伴う移動として扱われることがある
自宅から事業所への通勤中通勤災害として扱われることがある

自己判断で「これは労災にならない」と決めず、事業所と労働基準監督署に確認してください。退職後でも請求はできますが、事業所の証明を得るのに時間がかかります。

運転の負担そのものがつらいとき

事故がなくても、運転の責任が重くて続けられない、という場合があります。次を相談できます。

  • 送迎の担当を外してもらえないか
  • 添乗のみに変えられないか
  • 送迎のない事業所へ移る

「運転が負担」と言い出せないまま続けている人は多くいます。事故が起きる前に相談するほうが、結果的に事業所のためにもなります。

心の負担が続いているとき

事故の後、運転席に座ると手が震える、その道を通れない、夜眠れない。こうした状態が続いているなら、辞めるかどうかを決める前に受診してください。在職中の傷病であれば、健康保険の傷病手当金の対象になる可能性があります。退職後に発症したものは対象になりません。

まとめ

  • 辞めるつもりでも、事故の報告と記録は必ず残す
  • 保護者への説明は事業所として行う。個人で謝罪に行かない
  • 賠償の話が出たら、その場で約束せず保険の適用を確認する
  • 運転の負担は、事故が起きる前に相談してよい