退職日と入社日が空くときの健康保険・年金
転職先の入社日が退職日の翌日でない場合、その間だけ会社の健康保険にも厚生年金にも入っていない状態になります。 このとき何もしないでいると、法律上はすでに国民健康保険と国民年金の資格を取得しているのに届出だけをしていない、という状態になります。 「数日だから何もしなくていい」わけではない一方、保険料の負担が生じるかどうかは空白が月をまたぐかどうかで変わります。
このページで参照している法令・公式情報
- 国民健康保険法6条(適用除外)・7条(資格取得の時期)・8条(資格喪失の時期)
- 国民年金法11条の2(種別の変更があった月の扱い)
- 日本年金機構 会社を退職したときの国民年金の手続き
- 厚生労働省 国民健康保険の加入・脱退について
健康保険は退職日の翌日に自動で切り替わる
会社の健康保険の資格は退職日の翌日に喪失します。 国民健康保険法6条1号は、健康保険法の規定による被保険者を国民健康保険の被保険者としないと定めています。 そして同法7条は、国民健康保険の被保険者は「前条各号のいずれにも該当しなくなつた日から、その資格を取得する」としています。
つまり、会社の健康保険を抜けた日にその人は自動的に国民健康保険の被保険者になります。届出は資格を発生させる手続きではなく、資格を確認するための手続きです。届出をしていない期間も資格はあり、保険料もその日まで遡って計算されます。
届出をしていないと保険証が手元にないため、 病院の窓口ではいったん全額を自己負担することになります。 あとから加入の届出をすれば療養費の支給を申請できる場合がありますが、 取扱いは市区町村によって異なります。領収書と診療内容の明細は必ず保管してください。
国民健康保険の届出期限は資格を取得した日から14日以内です。 転職先の健康保険に加入した場合は、国民健康保険法8条により その日の翌日に国民健康保険の資格を喪失するので、脱退の届出も必要になります。
空白期間の健康保険の選択肢
| 選択肢 | 期限 | 注意点 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 資格取得の日から14日以内に届出 | 届出をしなくても資格は退職日の翌日に発生している。保険料もその日まで遡って計算される |
| 任意継続被保険者 | 退職日の翌日から20日以内に申請 | 前職の健康保険を続ける制度。原則2年間の制度で、短期間だけ使う前提ではない |
| 家族の被扶養者 | 家族の勤務先を通じて届出 | 収入要件を満たす場合に限る。保険料の負担は生じない |
数日から数週間の短い空白であれば、手続きの手間と保険料を比べて選ぶことになります。 制度ごとの詳しい比較は退職後の健康保険の選び方、任意継続の条件は任意継続被保険者制度をご覧ください。
国民年金は「その月の最後の種別」で決まる
年金で見落とされやすいのがここです。国民年金法11条の2は、被保険者の種別に変更があった月は、変更後の種別の被保険者であった月とみなすと定めています。さらに、同一の月において2回以上種別の変更があったときは、 その月は最後の種別の被保険者であった月とみなされます。
会社員は第2号被保険者、退職して自分で国民年金に入る期間は第1号被保険者です。 この条文により、同じ月のうちに転職先で厚生年金に加入すれば、 その月は第2号被保険者であった月とみなされ、第1号としての国民年金保険料は発生しません。
日本年金機構も、月の途中で次の会社に入る場合について、 新しい勤務先で第2号被保険者となればその期間の保険料納付は不要と案内しています。
パターン別に見た国民年金保険料の有無
| 退職日と入社日 | その月の最後の種別 | 国民年金保険料 |
|---|---|---|
| 4月15日退職 → 4月25日入社(同じ月内) | 第2号被保険者 | 第1号としての保険料は発生しない |
| 4月30日退職 → 5月1日入社(空白なし) | 5月末は第2号被保険者 | 第1号としての保険料は発生しない |
| 3月31日退職 → 4月10日入社(月をまたぐ) | 4月末は第2号被保険者 | 第1号としての保険料は発生しない |
| 3月31日退職 → 5月1日入社(丸1か月空く) | 4月末は第1号被保険者 | 4月分の国民年金保険料が発生する |
保険料が発生するかどうかは、空白の日数ではなく月をまたいで丸1か月分の空白ができるかどうかで決まります。 国民年金保険料は令和8年度で1か月あたり17,920円です(日本年金機構)。
保険料が結果的に発生しない場合でも、種別変更の届出そのものは必要です。 退職日の翌日から14日以内に、市区町村の国民年金の窓口で手続きしてください。 届出には退職日がわかる書類(離職票、退職証明書、健康保険資格喪失証明書など)を使います。
入社日を月初にすると空白が長くなることがある
月末退職・翌月1日入社であれば空白は生じません。 一方で「3月31日退職・5月1日入社」のように丸1か月空けると、 4月は月末時点で第1号被保険者となるため、4月分の国民年金保険料と4月分の国民健康保険料を自分で負担します。
転職先の入社日にある程度の希望を出せる場合は、この負担も含めて調整すると無駄が減ります。 ただし、有給消化や引き継ぎの都合で退職日が動かせないこともあるため、 保険料だけで決められるものではありません。
退職日そのものの決め方は退職日は月末か月末前日かで、社会保険料の負担の仕組みから解説しています。 入社日と退職日の調整については転職先が決まってからの退職届の出し方をご覧ください。
よくある質問
Q. 空白が1日だけでも届出は必要ですか?
制度上は、その1日について国民健康保険と国民年金の資格が発生します。 日本年金機構は月の途中で次の会社に入る場合も第1号資格取得の手続きが必要としています。 実務上どう扱われるかは窓口で確認してください。保険料については、 同じ月内に転職先の厚生年金に加入していれば第1号としての負担は生じません。
Q. 国民健康保険の保険料はいくらになりますか?
前年の所得と世帯の人数、お住まいの市区町村の料率で決まります。 全国一律ではなく市区町村ごとに条例で定められているため、 加入前に窓口で試算してもらうのが確実です。退職直後は前年の所得が高いままなので、 想定より高くなることがあります。
Q. 空白期間中に失業保険はもらえますか?
受け取れません。失業保険(基本手当)は就職しようとする意思と能力があるのに 職業に就けない状態にある人に支給されるもので、 次の就職先が決まっている期間はこれにあたりません。 詳しくは退職と失業保険をご覧ください。