解雇が制限される期間
解雇については、性格の異なる2つの規定があります。 ひとつは特定の期間そのものを禁止する労働基準法19条、 もうひとつは理由と相当性を問う労働契約法16条です。 自分の状況にどちらが関係するのかを分けて考えると、確認すべきことがはっきりします。
このページで参照している法令・資料
- 労働基準法19条1項・2項(解雇制限)
- 労働基準法20条(解雇の予告)・22条2項(解雇理由証明書)
- 労働契約法16条(解雇)・15条(懲戒)・17条(契約期間中の解雇等)
- 労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
- 厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
労働基準法19条が禁じる期間
労働基準法19条1項(解雇制限)
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに 産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。 但し、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
業務上の負傷・疾病の療養のための休業期間とその後30日間
仕事が原因での負傷や疾病で療養のために休業している間と、復帰してから30日間。業務外の私傷病はこの規定の対象ではありません
産前産後の休業期間とその後30日間
労働基準法65条の規定によって休業する期間と、その後30日間
ここで押さえておきたいのは、対象が業務上の負傷・疾病だという点です。 仕事とは無関係の病気やけがによる休職は、この条文の対象ではありません。 ただし後述する労働契約法16条は、すべての解雇に及びます。
ただし書のうち天災事変等による場合は、 19条2項によりその事由について行政官庁の認定を受けなければなりません。 会社の判断だけで例外にできるものではありません。
労働契約法16条は理由と相当性を問う
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、 その権利を濫用したものとして、無効とする。
条件が2つあることに注意してください。 合理的な理由があることと、社会通念上相当であることです。 理由があっても、その理由に対して解雇という結果が重すぎる場合は相当性が問題になります。
| 労基法19条 | 労契法16条 | |
|---|---|---|
| 定めている法律 | 労働基準法19条 | 労働契約法16条 |
| 内容 | 一定の期間は解雇してはならない | 合理的な理由を欠き相当でない解雇は無効 |
| 対象 | 業務上の傷病の療養休業・産前産後の休業とその後30日間 | すべての解雇 |
| 例外 | 打切補償の支払い、天災事変等による事業継続不能(行政官庁の認定が必要) | 合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合 |
なお懲戒については労働契約法15条に別の規定があり、 懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、 客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は、 権利を濫用したものとして懲戒は無効とされています。
有期契約の場合
契約期間が定められている場合、期間の途中で解雇するための要件はさらに厳しくなります。
労働契約法17条1項(契約期間中の解雇等)
使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、 その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
また同条2項は、有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして 必要以上に短い期間を定めることにより契約を反復して更新することのないよう 配慮しなければならないと定めています。
期間満了時に更新されない場合は解雇ではなく雇止めの問題になり、 労働契約法19条の枠組みで判断されます。詳しくは有期契約の雇止めをご覧ください。
解雇を告げられたときにすること
- 解雇理由証明書を請求する。 労働基準法22条2項により、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に請求すれば 遅滞なく交付されます。同項ただし書により、 予告後に別の事由で退職した場合は退職の日以後の交付を要しないとされているため、退職の日までに請求してください
- 予告の日付と解雇の日付を確認する(労働基準法20条)
- 予告手当の支払いの有無と金額を確認する
- やり取りを記録に残す
- 離職証明書の離職理由の記載を確認する
予告と手当の関係は解雇予告手当、証明書の請求は退職証明書は請求すればもらえるで詳しく解説しています。
解雇の効力に納得できない場合は、総合労働相談コーナーで相談できます。労働基準法違反にかかわる部分は労働基準監督署が窓口です。
よくある質問
Q. うつ病で休職中に解雇通告を受けました
業務上の疾病として扱われるかどうかで、労働基準法19条が及ぶかが変わります。 業務外の私傷病であれば19条の対象ではありませんが、 労働契約法16条による判断は別途行われます。 就業規則の休職に関する定めもあわせて確認してください。 うつ病・適応障害で退職する場合の手続きはうつ病・適応障害での退職届の書き方、退職後の傷病手当金は傷病手当金の継続給付で解説しています。
Q. 「解雇ではなく自主退職にしてほしい」と言われました
それは退職勧奨です。応じる義務はありません。 自主退職の形にすると、離職理由の扱いが変わる可能性があります。詳しくは退職勧奨に応じる義務はないをご覧ください。
Q. 解雇された場合の失業保険はどうなりますか?
ハローワークが示す特定受給資格者の範囲には 「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者」が含まれます。 受給資格の要件や所定給付日数が変わるため、特定受給資格者・特定理由離職者の範囲を確認してください。