生活相談員は、苦情の最初の受け手になります。現場の職員が受けた不満も、家族の不安も、最後は相談員のところに集まってきます。それが続くと、支援そのものが嫌になることがあります。
苦情対応は、施設の仕組みで受けるもの
介護保険の運営基準では、事業者は苦情を受け付ける窓口を設置し、記録し、必要な改善を行うことが求められています。苦情対応は個人が引き受けるものではなく、施設の仕組みとして行うものです。
- 受け付けた苦情は、必ず記録に残す
- 管理者に報告し、対応方針を組織として決める
- 対応の経過と結果を記録する
「自分で収めてしまう」ことが、いちばんの消耗につながります。収まったように見えても、施設には何も残らず、次に同じことが起きます。
記録に何を書くか
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 日時・方法 | いつ、電話か来所か訪問か |
| 相手 | 誰から(続柄まで) |
| 内容 | 相手の言葉に近い形で |
| 事実確認 | 現場に確認した結果 |
| 対応 | 誰が、何を、いつ回答したか |
| その後 | 相手の反応、再発防止の措置 |
感情的な表現を避け、事実と対応を分けて書くのが基本です。この記録は、後で自分を守るものにもなります。
1人で受けない工夫
- 重い内容は、管理者と2人で対応する
- 面談は、時間を区切ってから始める
- 電話で長時間になる場合は、来所か訪問に切り替える
- 回答期限を伝え、その場で結論を出さない
「その場で答えなければならない」という思い込みが、判断を苦しくします。確認して回答する、で構いません。
度を超えた要求を受けたとき
厚生労働省は、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)について、事業主が相談に応じ、適切に対応するための体制整備が望ましいという考え方を示しています。
次のような場合は、個人で対応する範囲を超えています。
- 長時間の拘束が繰り返される
- 人格を否定する発言、大声、威圧的な言動がある
- 金銭や不当な要求がある
- 職員個人への攻撃に向かっている
組織として対応方針を決め、必要なら複数対応、記録、警察や弁護士への相談まで含めて検討する場面です。1人で抱えることではありません。
外部の相談先
施設内で解決しない場合、次の窓口があります。
- 市区町村の介護保険担当課
- 都道府県国民健康保険団体連合会(苦情処理の窓口)
- 運営適正化委員会(都道府県社会福祉協議会)
これらは利用者側の相談先として案内されるものですが、施設として対応に迷ったときに、方針を確認する先にもなります。
自分の消耗に気づく
苦情対応が続くと、次のような変化が出ます。
- 電話が鳴ると身構える
- 特定の家族の名前を見ると動悸がする
- 職場に着く前から気が重い
- 家に帰っても仕事のことが頭から離れない
これは性格や耐性の問題ではありません。続いているなら、受診を検討してください。在職中の傷病であれば、健康保険の傷病手当金の対象になる可能性があります。退職後に発症したものは対象になりません。
辞めると決めるまでに
次を試したうえで変わらないなら、辞める判断は妥当です。
- 1 苦情対応を組織の仕組みに乗せる提案をする
- 2 複数対応、時間の区切りを求める
- 3 度を超えた要求について、方針を決めるよう求める
- 4 体調に出ているなら受診する
提案した記録が残っていることは、辞める判断の裏づけになります。
まとめ
- 苦情対応は施設の仕組みで受けるもの。1人で収めない
- 記録は事実と対応を分けて書く
- 度を超えた要求は、組織で対応する場面
- 体調に出たら、退職より先に受診する