人事の引き継ぎは、制度の運用ルールと、個別の事情の両方を渡す必要があります。

年間の労務スケジュール

  • 給与計算の締めと支給のスケジュール
  • 賞与の算定と支給時期
  • 社会保険の算定基礎届、月額変更届
  • 労働保険の年度更新
  • 年末調整
  • 健康診断、ストレスチェックの実施時期
  • 36協定の締結・届出の時期

「年に1回しか発生しない手続き」がもっとも抜けやすい部分です。カレンダー形式で残してください。

進行中の採用

  • 選考中の候補者と、現在のステップ
  • 内定者と、入社までのフォロー予定
  • 求人媒体・エージェントとの契約状況
  • 面接官のアサイン

候補者を宙に浮かせないでください。連絡が止まると、会社の評判に直結します。

個別の事情がある社員

人事には、書類に残せない、あるいは限られた人しか知らない情報が集まります。

  • 休職中・復職準備中の社員の状況
  • 配慮が必要な事情(傷病、家族の介護など)
  • ハラスメント相談の対応中の案件
  • 労使トラブルになりかけている案件

これらは引き継ぐ範囲と相手を慎重に決めてください。「誰にでも共有してよい情報」ではありません。上司と相談し、必要な人にだけ、必要な範囲で引き継いでください。

規程・制度

  • 就業規則と各種規程の最新版がどこにあるか
  • 直近で改定した内容と、その経緯
  • 労基署に届け出た日付
  • 労使協定(36協定、賃金控除、変形労働時間制など)の有効期限

労使協定の有効期限は、切れると違法状態になります。期限を一覧にして残してください。

社外との窓口

  • 顧問社労士、顧問弁護士
  • 産業医、健康診断の実施機関
  • 年金事務所、労基署、ハローワークの担当
  • 保険会社、福利厚生サービスの担当

システムと権限

  • 人事システム、勤怠システムの管理者権限
  • 給与計算ソフトのアカウント
  • 電子申請のID(e-Gov など)
  • 社員の個人情報にアクセスできる権限

退職日に確実に権限を停止してください。自分が管理者だと、自分の権限を消す作業も自分でやることになります。上司に立ち会ってもらうのが安全です。

持ち出してはいけないもの

  • 社員の個人情報(履歴書、評価、給与、健康情報)
  • 応募者の情報
  • ハラスメント相談の記録
  • 規程や制度設計の資料

人事が扱う情報は、機微性がもっとも高い部類です。「自分が作った資料だから」という理由での持ち出しは通りません。