歯科医院は院長と数名のスタッフという規模が多く、人間関係の問題が逃げ場のないものになりやすい職場です。
少人数職場で起きやすいこと
- 院長との関係がそのまま職場全体の空気になる
- 相談できる同職種が院内にいない
- 人事異動という選択肢がない
- 就業規則や相談窓口が整備されていない
大きな組織なら「異動」で解決できることが、歯科医院では「辞める」しか選択肢にならないという構造があります。辞めたいと感じることが甘えだという話ではありません。
制度上、どこまでが問題になるか
労働施策総合推進法により、職場におけるパワーハラスメントの防止措置を講じることが事業主の義務とされています。この義務は中小企業にも適用されています。
厚生労働省は、パワーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものとして整理しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
院長からの叱責がこれに当たるかどうかは、内容と程度によります。指導の範囲か、それを超えているかの線引きは、記録がないと判断できません。
在職中に残しておくもの
辞めた後では集められないものがあります。
- 言われた内容と日付のメモ(その日のうちに書く)
- 勤務時間の記録
- 給与明細
- 雇用契約書、就業規則の写し
- 診療記録ではなく、自分の労働条件に関する記録
録音が許されるかどうかは状況によりますが、自分が当事者である会話の記録は、後で事実を確認する手がかりになります。
相談できる先
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー(無料。労働者・使用者のどちらからでも相談できる)
- こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
- 各都道府県の歯科医師会
- 法テラス(収入等の条件を満たせば無料法律相談)
体調に出ているとき
眠れない、食欲がない、朝に体が動かないといった状態が続いている場合は、辞めるかどうかを決める前に受診してください。判断力が落ちている状態で決めたことは、後から後悔につながりやすくなります。
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けない期間の生活を支える制度です。退職を決める前に、休職という選択肢が使えるかを確認する価値があります。