歯科医師の退職で最も影響が大きいのは、治療途中の患者です。補綴やインプラント、矯正のように数か月単位で進む治療を抱えたまま抜けると、患者と医院の双方に負担が残ります。

法律上の下限は2週間

期間の定めのない雇用契約であれば、民法627条1項により、申し入れから2週間で契約は終了します。

民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

ただし歯科医師の場合、2週間では治療途中の患者を整理しきれません。

実務上の目安

状況申し出の目安
一般診療が中心2〜3か月前
補綴・インプラントを担当3〜6か月前(治療完了まで見込む)
矯正を担当6か月〜1年前(治療期間が長い)
分院長・管理者6か月前以上(後任の管理者が必要)

就業規則に「1か月前まで」「3か月前まで」といった定めがあれば、まずそれに従って進めるのが穏当です。

治療途中の患者をどう考えるか

自分が抜けることで、次のどれになるかを患者ごとに整理します。

  • 退職日までに治療を完了できる
  • 後任の歯科医師に引き継ぐ
  • 他院への紹介が必要

退職の申し出時期は、この整理にかかる時間から逆算します。新規の長期治療を受け持たないよう、申し出の直後から調整を始めるのが現実的です。

有期契約の場合

勤務歯科医で1年契約などになっている場合、期間の途中で一方的に辞めることは原則できません。民法628条は「やむを得ない事由」があるときに限って解除を認めています。契約書で期間の定めの有無を確認してください。

分院長・管理者を務めている場合

歯科医院の管理者は医療法上の届出事項です。管理者が変わるときは医療機関から都道府県知事等への変更の届出が必要になります。後任の管理者が決まらないと退職日を動かせないことがあるため、通常より早い時期に申し出てください。