経理は会社の数字を全部知っている立場です。転職するとき、どこまでが「経験」で、どこからが「持ち出し」かを整理しておく必要があります。
就業規則と誓約書
多くの会社では、就業規則や入社時の誓約書に在職中および退職後の守秘義務が定められています。
退職時に改めて誓約書へ署名を求められることがあります。内容をよく読んでください。範囲が過度に広い場合や、競業避止が含まれている場合は、署名前に確認が必要です。
不正競争防止法の営業秘密
不正競争防止法は、営業秘密を保護しています。営業秘密にあたるのは、次の3つをすべて満たす情報です。
- 秘密として管理されていること(秘密管理性)
- 事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)
- 公然と知られていないこと(非公知性)
経理が扱う情報の多くは、これに該当し得ます。不正の利益を得る目的などで営業秘密を使用・開示する行為は、法律上の責任を問われます。
転職先で話してよいこと
境界線の考え方は次のとおりです。
| 使ってよい | 使ってはいけない |
|---|---|
| 会計基準や税法の知識 | 前職の具体的な数字 |
| 業務フローの設計の考え方 | 前職の内部資料そのもの |
| システムの操作スキル | 前職の取引先リスト、単価 |
| 決算を回した経験 | 前職の未公表の財務情報 |
「頭の中に残る一般的なスキル」は自分のものです。それを使うことは制限されません。
未公表の情報に注意
上場企業や、上場準備中の企業の経理にいた場合、未公表の決算情報や重要事実に触れています。
金融商品取引法により、上場会社等の業務等に関する重要事実を職務に関して知った会社関係者は、その事実が公表されるまで、その会社の株式等の売買をしてはならないとされています。
会社関係者でなくなった後も、一定期間はこの規制の対象になります。自分が保有している自社株の扱いを含め、会社のインサイダー取引管理規程を確認してください。
自社株・持株会の扱い
- 従業員持株会は退職時に脱退するのが一般的
- ストックオプションは、退職により権利を失う条件になっていることがある
- 売却のタイミングにインサイダー規制がかかる場合がある
退職を決めたら、早い段階で自社株の扱いを確認してください。「辞めてから考える」と選択肢が減ります。
相談先
- 会社の法務部・コンプライアンス窓口
- 法テラス(収入等の条件を満たせば無料法律相談)
誓約書の内容に疑問があるまま署名しないでください。署名を保留して持ち帰り、確認することは可能です。