士業事務所からの独立は、顧客をめぐるトラブルが起きやすい場面です。
競業避止・顧客の勧誘に関する条項
雇用契約書や誓約書に、次のような条項が入っていることがあります。
- 退職後一定期間、同一地域で開業しない
- 事務所の関与先・依頼者に働きかけない
- 事務所の職員を勧誘しない
こうした条項が常に有効というわけではありません。裁判では、期間・地域・対象業務の範囲、代償措置の有無などから、合理的な範囲かどうかが判断されます。職業選択の自由を過度に制限する内容は無効と判断されることがあります。
ただし一般論だけで進めるのは危険です。契約書に定めがある場合は、開業の準備を進める前に弁護士に相談してください。
顧客への働きかけ
在職中に、担当している関与先・依頼者へ独立後の契約を持ちかけることは、事務所との関係で問題になります。
退職後に、顧客が自分の判断で依頼してくることは自由です。在職中の働きかけと、リストの持ち出しが問題になります。
疑われないためにも、持ち出さないことと、在職中に働きかけないことを徹底してください。
職員の引き抜き
在職中に同僚へ移籍を持ちかける行為も、事務所との関係で問題になり得ます。
登録の手続き
独立して事務所を開設する場合、所属する会への登録・変更の手続きが必要です。
- 税理士は、税理士名簿への登録と、事務所の設置に関する届出
- 弁護士は、弁護士会への登録事項の変更
- 社会保険労務士、行政書士なども、それぞれの会の規則による
手続きの内容と期限は、所属する会の規則で定められており、改正されることがあります。所属会の最新の案内を自分で確認してください。
開業の手続き
- 税務署に開業届を提出する
- 青色申告を選ぶ場合は、期限内に青色申告承認申請書を出す
- 国民健康保険・国民年金への切り替え
- 事業用の口座と会計の準備
- 職業賠償責任保険への加入を検討する
在職中にどこまで準備できるか
物件探しや資金調達の相談など、事務所の業務に支障のない範囲での準備は一般に問題になりません。
ただし、
- 勤務時間中に開業準備を行う
- 事務所の設備・備品を使う
- 事務所の書式やマニュアルを持ち出す
これらは在職中の義務との関係で問題になり得ます。
退職時の誓約書
守秘義務や競業避止の誓約書へ署名を求められることがあります。
内容をよく読んでください。範囲が過度に広い場合、その場で署名せず持ち帰って確認することができます。