訪問介護は、同じ家に何年も通うことがあります。「担当が変わります」の一言が、利用者にとっては生活が変わることを意味します。
伝える順番を間違えない
利用者に先に伝えると、事業所とケアマネジャーが把握していないまま話が広がります。次の順番が基本です。
- 1 事業所(管理者・サービス提供責任者)に退職を申し出る
- 2 事業所が、担当のケアマネジャーに連絡する
- 3 後任が決まってから、事業所と一緒に利用者・家族に伝える
自分から先に利用者へ伝えたくなる気持ちが強いほど、この順番が崩れやすくなります。利用者にとっては「次に誰が来るのか」がいちばんの不安なので、後任が見えてから伝えるほうが安心につながります。
伝えるときの言い方
理由を細かく説明する必要はありません。事業所への不満を利用者に話すと、利用者が事業所との関係で困ることになります。
- 「○月末で退職することになりました」
- 「○月から○○が伺います」
- 「引き継ぎはしっかりしますので、これまでどおりで大丈夫です」
利用者が知りたいのは、あなたの事情ではなく、明日からの生活がどうなるかです。
担当交代の負担が大きい利用者
次のような利用者は、交代の影響が大きくなります。事業所に先に共有してください。
| 状況 | 伝えておくこと |
|---|---|
| 認知症がある | 新しい人を受け入れるまでの時間、慣れた声かけの仕方 |
| 同性介助が必要 | 後任の性別の条件 |
| 医療的ケアや特定の手順がある | 手順書に書ききれていない実際のやり方 |
| 家族との関係に経緯がある | 過去のやりとりと、避けたほうがよい話題 |
手順書に書けるのは「何をするか」までです。「どう声をかけると受け入れてもらえるか」は、書かなければ消えます。
同行を1回入れてもらう
可能であれば、後任と一緒に訪問する機会を1回でも作ってください。文書だけの引き継ぎより、利用者の安心につながります。
同行のときは、自分が全部やってしまわず、後任に手を動かしてもらい、自分は補足に回るほうが引き継ぎになります。
退職後の連絡と贈り物
長く担当した利用者や家族から、退職後に連絡先を聞かれることがあります。気持ちは自然なものですが、個人的なつながりを残すことには、いくつかの問題があります。
- 何かあったときに、あなたが対応できる立場ではない
- 現在の担当者や事業所の方針と食い違いが起きる
- 業務上知り得た情報の扱いが、あいまいになる
連絡先を求められたときは、「事業所に連絡してもらえれば、必ず対応します」と伝えるのが基本です。
贈り物についても同じです。多くの事業所は、金品の授受を禁止しています。受け取れない理由を、利用者を否定する形にせず「決まりで受け取れないことになっているんです」と伝えてください。
守秘義務は退職後も続く
介護保険法や運営基準は、事業所とその従業者に、業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならないと定めています。この義務は退職後も残ります。
地域が狭いほど、名前を出さなくても本人にたどり着きます。前の職場の話をするときは、利用者が特定できる形にしないでください。
最後の訪問の日
最終日は、いつもの介助を、いつもどおりにやって終わるのがいちばんよい形です。特別なことをしようとすると、利用者に「これで最後だ」という緊張が伝わります。
「ありがとうございました。次は○○が伺います」で十分です。
まとめ
- 事業所、ケアマネジャー、利用者の順で伝える
- 利用者が知りたいのは、明日からの生活がどうなるか
- 手順書に書けない「声のかけ方」こそ引き継ぐ
- 退職後の個別の連絡と贈り物は受けない。守秘義務は続く