訪問介護では、実際に働いた時間と給与が合わない、という相談が絶えません。移動時間、待機時間、記録を書く時間、急なキャンセル。これらが給与に反映されていない場合、未払い賃金として請求できることがあります。

まず、記録を集める

請求できるかどうかは、記録があるかどうかで決まります。辞めてからでは集められないものがあるため、在職中に手元に残すことが最優先です。

集めるものどこにあるか
訪問予定表・シフト表事業所から配布されたもの
訪問した時刻の記録訪問記録、記録システムの入力履歴
移動の実績自分の手帳、乗換や走行の記録
給与明細毎月受け取っているもの
雇用契約書・労働条件通知書入職時に受け取ったもの
就業規則事業所に備え付けられている

給与明細は、何年分あるかで請求できる範囲が変わります。捨てずに保管してください。

移動時間の考え方

厚生労働省は、訪問介護労働者の移動時間について、事業場や利用者宅の間の移動時間で、使用者の指揮命令下にあると認められる場合は労働時間にあたる、という考え方を示しています。

契約書に「移動時間は労働時間としない」と書かれていても、実態として指揮命令下にあれば労働時間です。書面の記載だけで決まるものではありません。

同様に、次の時間も労働時間にあたる場合があります。

  • 訪問と訪問の間の待機で、事業所の指示により待つ必要があった時間
  • 記録の作成、報告のための時間
  • 研修や会議への参加が業務として求められている時間

キャンセルになったとき

利用者の都合で訪問が急にキャンセルになった場合、事業所の責めに帰すべき事由があるときは、休業手当の対象になることがあります(労働基準法26条)。

労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

利用者都合のキャンセルがすべて対象になるわけではありません。代替の業務を用意できたか、事業所がどう対応したかによって判断が変わります。

進める順番

  1. 1 記録を集める。これがないと何も進みません
  2. 2 事業所に確認する。計算方法を聞き、認識の違いを整理します。口頭ではなく、メールなど記録が残る形が望ましいです
  3. 3 それでも解決しなければ、労働基準監督署に相談する。集めた記録を持参してください
  4. 4 金額が大きい、事業所が応じない場合は、法テラスや弁護士、労働組合に相談する

いきなり労働基準監督署に行くより、事業所に確認した記録があるほうが話が早く進みます。

時効に注意する

賃金請求権には時効があります。労働基準法115条は、賃金の請求権について定めており、現在は当分の間3年とされています。

この期間は法改正で変わることがあるため、自分のケースに何年が適用されるかは、労働基準監督署で確認してください。古い分から順に時効にかかるため、迷っている間に請求できる範囲が減ります。

辞めてからでも請求できる

退職した後でも、時効の範囲内であれば請求できます。ただし、退職後は記録が手に入りにくくなります。在職中に給与明細と勤務記録を確保しておくことが、辞めた後の選択肢を残します。

なお、退職時の金品については労働基準法23条1項に定めがあります。

労働基準法23条1項
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

まとめ

  • 記録がすべて。在職中に給与明細と勤務実績を確保する
  • 移動時間は、契約書の記載ではなく実態で判断される
  • 事業所への確認、労働基準監督署への相談、の順で進める
  • 賃金請求権には時効がある。迷っている間に範囲が減る