訪問介護は、利用者の生活の場に入る仕事です。そのぶん、辞めるときに手元に残っているものが多くなります。鍵と記録の返却は、退職手続きの中でもっとも取り違えの起きやすい部分です。
鍵は、最終出勤日より前に返す段取りを組む
利用者宅の鍵を預かっている場合、返却先は利用者本人や家族ではなく、原則として事業所です。誰にいつ返したかを記録に残してください。
- 何本預かっているかを、まず数える
- キーボックスの暗証番号を知っている場合は、その情報も引き継ぐ対象になる
- 返却の記録は、日付と受け取った人の名前まで残す
「最終日に渡すつもりだった鍵が1本見つからない」という事態が、退職日の直前にもっとも起きやすいトラブルです。退職を申し出た時点で数えておくと、探す時間が確保できます。
訪問記録は事業所の管理下に戻す
訪問介護記録、サービス提供記録、手順書、連絡ノート。これらは事業所が保存義務を負う書類です。自宅に持ち帰ったままにせず、すべて事業所に戻してください。
自分用にメモしていたノートも同じです。利用者の氏名、住所、病歴、家族構成が書かれているものは、内容が断片的でも個人情報です。
利用者の連絡先を残さない
携帯電話に利用者や家族の電話番号が入っている場合は、退職時に消してください。「何かあったときのために」と残しておく人がいますが、退職後のあなたは、その情報を持つ立場ではありません。
個人情報保護法は、個人データの適正な取扱いを事業者に求めています。退職者が個人データを持ち出した場合、事業所が管理責任を問われるだけでなく、持ち出した本人が責任を問われることもあります。
業務で使っていた端末の扱い
事業所から貸与されたスマートフォンやタブレットには、訪問予定や利用者情報が入っています。返却の前に、私物の写真やアカウントが混ざっていないかを確認してください。逆に、自分の端末に業務アプリを入れていた場合は、アンインストールとログアウトまで済ませます。
| 持っているもの | 退職時の扱い |
|---|---|
| 利用者宅の鍵 | 事業所に返却し、記録を残す |
| 訪問記録・手順書 | すべて事業所に戻す |
| 自分用のメモ | 個人情報が含まれるものは戻す |
| 携帯に入れた連絡先 | 削除する |
| 貸与端末 | 私物データを分離してから返却 |
| 自分の端末の業務アプリ | 削除しログアウトする |
退職後に利用者から連絡が来たら
長く担当していた利用者や家族から、退職後に連絡が来ることがあります。気持ちのうえでは応じたくなりますが、個別に対応すると、現在の担当者や事業所の対応と食い違いが生じます。
連絡が来た場合は、事業所に問い合わせてもらうよう伝えるのが基本です。それが利用者にとっても、確実な支援につながります。
守秘義務は退職後も続く
介護保険法や運営基準は、事業所とその従業者に、業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らしてはならないと定めています。この義務は、退職したからといって消えるものではありません。
退職後に、前の職場の話を人にするとき、利用者が特定できる形で話さないよう注意してください。地域が狭いほど、断片的な情報でも本人にたどり着きます。
まとめ
- 鍵は退職を申し出た時点で本数を数え、事業所に返して記録を残す
- 訪問記録も自分用のメモも、個人情報が入っているものは事業所へ戻す
- 携帯に入れた利用者・家族の連絡先は削除する
- 守秘義務は退職後も続く