退職届ビルダー

退職を理由に損害賠償を請求されたら

退職を伝えた場面で「損害賠償を請求する」と言われることがあります。 この言葉に法的な裏づけがあるのかを判断するには、辞めること自体が契約違反にあたるのかという点から 順に見ていく必要があります。

このページで参照している法令・資料

  • 民法627条1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
  • 民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
  • 労働基準法16条(賠償予定の禁止)
  • 労働基準法24条1項(賃金の支払・全額払いの原則)
  • 労働基準法23条(金品の返還)
  • 厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内

辞めることは法律が認めた解約

民法627条1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。 この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

期間の定めのない雇用では、辞めることは法律が認めた解約の申入れです。 会社の承諾を得て初めて有効になるものではありません。 したがって、所定の期間を置いて退職したこと自体は契約違反にあたらず、 それだけを理由に賠償責任が生じるものでもありません。

2週間の数え方や、就業規則で「1か月前」と定められている場合の関係については民法627条の2週間ルールで解説しています。

あらかじめ金額を決めておく約束は禁止されている

「途中で辞めたら違約金◯◯万円」「研修期間中の退職は罰金」といった定めについては、 労働基準法16条が正面から禁止しています。

労働基準法16条(賠償予定の禁止)

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

禁じられているのは、実際に損害が生じたかどうかを問わずに支払う金額をあらかじめ決めておくことです。 契約書や誓約書に署名していたとしても、その事実だけで支払義務が確定するわけではありません。 研修費や資格取得費用の返還条項については研修費・資格取得費用の返還を求められたらで詳しく扱っています。

期間の定めがある場合は条件が違う

契約社員などで契約期間が決まっている場合、根拠となる条文が変わります。

 期間の定めのない雇用期間の定めのある雇用
根拠となる条文民法627条1項民法628条
辞めるための条件いつでも解約の申入れができるやむを得ない事由があるとき
効力が生じる時期解約の申入れの日から2週間を経過したとき直ちに契約を解除できる
賠償責任の定め条文に定めなしその事由が当事者の一方の過失によって生じたときは相手方に対して責任を負う

民法628条は、期間を定めた場合であってもやむを得ない事由があるときは直ちに契約の解除ができると定める一方で、 その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは相手方に対して損害賠償の責任を負うとしています。 期間の定めのない雇用より条件が細かいので、 契約期間、更新の有無、辞める理由を確認したうえで相談してください。 有期雇用の退職の進め方は契約社員・派遣社員の退職届にまとめています。

請求されたときにすること

1. 口頭ではなく書面で根拠を求める

何の行為について、いくらの損害が生じたと主張しているのか、その金額はどう計算したのかを書面で示してもらいます。示せない請求は、退職を思いとどまらせるための言葉である可能性があります

2. その場で支払いや控除に同意しない

「給与から引く」という提案に同意する書面へ署名する前に相談してください。賃金は全額を支払わなければならないのが原則です(労働基準法24条1項)

3. 退職の意思表示は記録に残る形で行う

退職届を提出した日付が分かるようにしておきます。受け取ってもらえない場合は、配達の記録が残る方法で送る手段があります

4. やり取りを保存する

メール、チャット、書面はすべて残します。言われた内容と日時をメモしておくことも、後から経緯を説明するときに役立ちます

退職届を受け取ってもらえない場合の進め方は退職届が受理されない場合の対処法、 引き止めの断り方は退職の引き止めを断る方法をご覧ください。

賠償の話と給与・貸与品の精算は別

労働基準法23条1項は、退職の場合において権利者の請求があったときは7日以内に賃金を支払い、 積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。 さらに同条2項は、賃金や金品に争いがある場合について、 使用者は異議のない部分をその期間中に支払い、又は返還しなければならないと定めています。

つまり、賠償をめぐって争いがあることは、 争いのない給与や返還物まで留保してよい理由にはなりません。 退職時の精算は退職時の給与・貸与品の精算で解説しています。

よくある質問

Q. 引き継ぎをせずに辞めたら賠償の対象になりますか?

引き継ぎをめぐる事情は、退職の効力そのものを左右するものではありません。 ただし、円滑に引き継ぐことは実務上の信頼にかかわる部分ですし、 意図的に業務を妨げるような行為は退職とは別の問題になりえます。 できる範囲で引き継ぎ書を残しておくことをおすすめします。進め方は退職時の引き継ぎ完全ガイドをご覧ください。

Q. 会社が退職金を払わないと言っています

退職金は、制度として定められている場合は労働条件の一部です。 賠償の主張と相殺する形で支払わないことができるかは、 労働基準法24条1項の全額払いの原則との関係が問題になります。 制度の有無の確認方法は退職金がない会社は違法?、支払時期は退職金はいつ振り込まれる?で解説しています。

Q. 実際に訴えられることはあるのですか?

損害賠償を求めるには、会社側が、賠償の根拠となる行為、生じた損害、 その間の因果関係、金額を主張し立証する必要があります。 通常の退職について、これらをそろえるのは容易ではありません。 ただし「請求すると言われた」ことと「請求されない」ことは別なので、 書面が届いた場合は放置せず、弁護士や法テラスに相談してください。

関連記事

退職届を今すぐ無料作成する

項目を入力するだけでPDFをダウンロード。会員登録不要。

無料で退職届を作成する