退職理由の深掘り質問への対応
退職理由を述べたあとに続く質問は、多くの場合同じことが自社でも起きないかを確かめるためのものです。 その範囲であれば事実を述べれば足ります。 一方で、適性や能力と関係のない領域に入る質問もあり、 そちらには答える義務がありません。 この線引きは厚生労働省が具体的な項目として示しています。
このページで参照している公式情報・法令
- 厚生労働省 採用選考時に配慮すべき事項(公正な採用選考をめざして)
- 職業安定法3条(均等待遇)・5条の4(求人等に関する情報の的確な表示)・5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)
- 労働基準法22条3項(退職時等の証明)
業務に関係する深掘りへの対応
| 聞かれやすい質問 | 答え方の軸 |
|---|---|
| 「なぜその時点で辞めたのですか」 | 時期を選んだ理由(引き継ぎの区切り、有給消化、就業規則上の申出期限など)を事実として述べる |
| 「上司には相談しましたか」 | 相談や異動の申し出をしたかどうか、その結果どうだったかを述べる。試したことがあれば具体的に |
| 「同じことが当社でも起きませんか」 | 前職で問題になった条件を挙げ、応募先ではその点をどう確認しているかを述べる |
| 「ご家族はどう言っていますか」 | 家族に関することは配慮すべき事項にあたる。就業に支障がないことを述べれば足りる |
退職理由そのものの組み立て方は面接での退職理由の伝え方にまとめています。
就職差別につながるおそれがある14事項
厚生労働省は、次の事項を採用選考時に配慮すべきものとしています。本人に責任のない事項と本来自由であるべき事項は、 本人が職務を遂行できるかどうかには関係がなく、適性と能力に関係のないものだからです。
応募用紙・面接・作文などで把握すべきでない事項(本人に責任のない事項)
- ・本籍・出生地に関すること
- ・家族に関すること(職業・続柄・健康・地位・学歴・収入・資産など)
- ・住宅状況に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
- ・生活環境・家庭環境などに関すること
応募用紙・面接・作文などで把握すべきでない事項(本来自由であるべき事項)
- ・宗教に関すること
- ・支持政党に関すること
- ・人生観・生活信条などに関すること
- ・尊敬する人物に関すること
- ・思想に関すること
- ・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
- ・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
採用選考の方法
- ・身元調査などの実施
- ・本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
- ・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
出典:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」
法律上の裏づけ
職業安定法5条の5は、求人者や職業紹介事業者などが求職者等の個人情報を 収集・保管・使用するにあたっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして収集し、 収集の目的の範囲内で保管し、使用しなければならないと定めています(本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合を除く)。
また同法3条は、何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、 労働組合の組合員であること等を理由として、 職業紹介、職業指導等について差別的取扱を受けることがないとしています。
退職に関する書類の面でも同様の考え方があります。 労働基準法22条1項により、労働者が退職時に使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について 証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりませんが、 同条3項はその証明書に労働者の請求しない事項を記入してはならないと定めています。求められていない情報まで書かせない、という構造は共通しています。
実際に聞かれたときの対応
配慮すべき事項にあたる質問を受けた場合、その場で法律論を持ち出すより、就業に支障がないことを述べて話題を業務に戻すほうが現実的です。
- ・家族の事情を聞かれた場合:「勤務に支障はありません」と述べ、勤務可能な条件を伝える
- ・信条や思想に関する質問:業務との関係が説明されない限り、答えを控える旨を伝えてよい
- ・健康診断の実施を求められた場合:業務との関連について確認する
選考の過程で繰り返し配慮すべき事項に触れられる場合は、 ハローワークや都道府県労働局に相談できます。 求人票の内容と面接での説明に相違がある場合も同様です。 職業安定法5条の4は、求人や募集に関する情報について 虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないとし、 正確かつ最新の内容に保つことを求めています。
よくある質問
Q. 前職に問い合わせられることはありますか?
身元調査などの実施は、厚生労働省が挙げる配慮すべき14事項に含まれています。 なお、退職代行を使ったかどうかが記録として残る仕組みは基本的にありません。詳しくは退職代行を使うと転職に不利になるかをご覧ください。
Q. 退職証明書の提出を求められたら応じる必要がありますか?
退職証明書は労働基準法22条1項により、労働者が請求すれば会社が交付する書類です。 記載される事項は請求した範囲に限られ、同条3項により請求しない事項を記入してはならないとされています。 何のために必要かを確認したうえで、必要な項目だけを記載してもらう形が取れます。
Q. 面接で聞かれた質問が不適切だった場合、どこに相談できますか?
ハローワークや都道府県労働局に相談できます。 厚生労働省は公正な採用選考の特設サイトで、求職者向けの案内も公開しています。