後任がいないから辞められないのか
「後任が決まったら」と言われて、そのまま半年が過ぎる。 よくある展開です。問題は約束の内容ではなく、期限がないことにあります。 辞められるかどうかと、引き継ぎをどうするかは、分けて考えてください。
分けて考える2つのこと
会社の責任
後任の採用、人員の配置、業務の再編。 これらは経営の判断で行うものであり、 退職する労働者が負う義務ではありません。
自分の責任
担当してきた業務を、後任が引き継げる形にして残すこと。 在職中にできる範囲で尽くしておくことに意味があります。
混ざると「後任が決まるまで辞められない」という話になります。 分けて考えれば、退職日は提示しつつ、その日までに引き継ぎを尽くすという整理ができます。
待つと決めるなら期限を切る
事情があって時期をずらすこと自体は問題ありません。 ただし「後任が決まるまで」は期限ではありません。 具体的な日付に置き換えてください。 「〇月〇日を退職日とします」と伝えるだけで、話の性質が変わります。
退職日から逆算して申し出る期限を決める方法は退職日の決め方にまとめています。有給の残日数も含めて組むと、後から動かしにくくなります。
属人化している業務ほど文書に残す
自分にしかできない業務があるという状況は、 引き継ぎを難しくすると同時に、記録を残す価値を高めます。 すべてを口頭で引き継げなくても、書いてあれば後任が調べられます。
- ・業務の手順(何を、どの順番で、いつまでに)
- ・判断の基準(どういうときにどう決めてきたか)
- ・例外的な対応(過去に起きたトラブルとその処理)
- ・関係者の連絡先(社内・取引先)
- ・データやファイルの保存場所
- ・定期業務のスケジュール
アカウントやパスワードは文書に書かず、引き継ぎ先に直接伝えてください。 くわしくは退職時の引き継ぎ完全ガイドにまとめています。
引き継ぎ書は自分を守る
労働基準法16条により、労働契約の不履行について違約金を定めたり 損害賠償額を予定したりする契約は禁じられています。 退職したこと自体を理由とする請求は、通常認められません。
ただし、引き継ぎを一切せずに去った結果として現実に損害が生じた場合の議論は 別に存在します。引き継ぎ書が残っていれば、やるべきことをやったと示せます。 日付を入れて、提出した相手も控えておいてください。
損害賠償を持ち出された場合の考え方は退職を理由に損害賠償を請求されたらにまとめています。
それでも進まないとき
退職日を提示しても話が進まない、引き止めが執拗に続く。 そうした場合は、記録が残る形で意思表示を行うことになります。
よくある質問
後任が決まるまで辞められないのですか?
そのような法的な決まりはありません。期間の定めのない雇用であれば、民法627条1項により解約の申入れの日から2週間を経過することによって雇用は終了します。後任の採用は会社が行うもので、退職の効力に関係しません。ただし引き継ぎを尽くすことは、円滑に辞めるうえでも自分を守るうえでも意味があります。
待つと言ってしまいました。撤回できますか?
退職日について会社と合意していない段階であれば、改めて退職日を提示することは可能です。すでに退職日を合意している場合でも、その日を動かす相談はできます。重要なのは、期限のない約束にしないことです。「後任が決まるまで」は実質的に無期限になるため、具体的な日付に置き換えて伝え直してください。
引き継ぎをしないと損害賠償されますか?
労働基準法16条により、労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定したりする契約は禁じられています。あらかじめ金額を決めておくことはできません。ただし、引き継ぎを一切せずに去った結果として現実に損害が生じた場合の議論は別に存在します。可能な範囲で引き継ぎ書を残しておくことが、自分を守ることにもつながります。
自分にしかできない業務があります
属人化している業務ほど、文書に残す価値があります。手順、判断の基準、例外的な対応、関係者の連絡先、データの保存場所を書き出してください。すべてを引き継げなくても、記録が残っていれば後任が調べられます。逆にいえば、属人化を解消しないまま放置してきたのは会社側の課題でもあります。