葬祭業は少人数で運営している事業所が多く、退職を申し出ると強い引き止めに遭うことがあります。しかし後任の確保は会社側の責任です。

退職に会社の承諾は要らない

民法627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。

退職は労働者の一方的な意思表示で成立します。会社が承諾するかどうかは関係ありません。

「受理しない」と言われても効力は生じる

退職届は、会社に到達した時点で効力が生じます。「受け取らない」「考え直せ」と言われても、到達している事実があれば退職の効力に影響しません。

段階的な対処

1. 口頭で伝えたうえで書面を出す

まず上長に口頭で伝え、退職届を提出します。

2. 受け取ってもらえない場合は郵送する

内容証明郵便で送れば、いつ・誰に・どんな内容の文書を送ったかを郵便局が証明します。配達証明を付ければ到達日も記録に残ります。

宛先は法人の代表者にします。支社長が受け取らない場合、本社の代表者宛に送ることで話が動くことがあります。

3. それでも改善しない場合

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)に相談する
  • 悪質な引き止めが続く場合は労働基準監督署に相談する

「損害賠償を請求する」と言われたら

退職したこと自体を理由に損害賠償が認められることは通常ありません。退職は労働者の権利だからです。

また労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定したりする契約を禁止しています。「途中で辞めたら違約金」という取り決めがあっても、それ自体が無効です。

実際に書面で請求された場合は、弁護士に相談してください。

「担当中の施行が終わるまで」と言われた場合

打ち合わせ済みの施行を最後まで担当するのは望ましいことですが、次々に新しい施行を割り当てられると、いつまでも辞められません

対応としては、退職日を先に明示することです。

「◯月◯日を退職日とさせてください。それまでに担当している施行は責任を持って対応します。それ以降の施行は割り当てないようお願いします。」

資格取得費用の返還を求められたら

葬祭ディレクター技能審査の受験料や研修費用を会社が負担していた場合、「辞めるなら返せ」と言われることがあります。

労働基準法16条により違約金や損害賠償額の予定は禁止されていますが、費用の返還請求が常に無効というわけではありません。貸付として明確な合意があるかなど、個別の事情によります。実際に請求された場合は、契約内容を持参して弁護士や労働基準監督署に相談してください。