退職代行のトラブル
退職代行で起きる問題の多くは、依頼先の選び方と、依頼する前の準備に原因があります。裏を返せば、申し込む前に手を打てるものがほとんどです。 起きやすい6つの場面と、それぞれの対策を整理しました。
起きやすい6つの場面
1. 交渉できない依頼先に交渉を期待してしまう
原因:民間業者は弁護士法72条により交渉ができません。「有給を消化したい」「退職日を調整したい」という希望を伝えることはできても、会社が拒否した時点で止まります。
対策:申し込む前に運営元を確認します。交渉が必要になりそうなら、労働組合か弁護士が運営するサービスを選びます。
2. 会社から本人に直接連絡が来る
原因:代行業者が「本人に連絡しないでほしい」と伝えても、会社にそれを守る法的義務はありません。電話・郵便・自宅訪問が起きることがあります。
対策:連絡が来た場合の対応を事前に決めておきます。出ない場合でも、郵便物は退職手続きに必要な書類のことがあるため開封して確認します。
3. 離職票や源泉徴収票が届かない
原因:会社の手続きが止まると届きません。退職代行を使うと自分で催促しにくくなり、失業保険の申請や確定申告が遅れます。
対策:源泉徴収票は所得税法226条により退職の日以後1か月以内の交付義務があります。届かない場合はハローワークや税務署に相談できます。
4. 私物や証拠を持ち出せなくなる
原因:依頼した日から会社に立ち入らないのが通常です。デスクの私物、給与明細やタイムカードの写しなどを残したままだと取りに戻れません。
対策:依頼する前に持ち出します。とくに未払い賃金を請求する可能性がある場合、勤怠記録は後から入手できません。
5. 追加費用が発生する
原因:労働組合型では組合費、弁護士に請求を依頼する場合は着手金・成功報酬が別途かかることがあります。
対策:申し込み前に総額を確認します。どこまでが基本料金に含まれるかを明確にしておきます。
6. 転職先への入社手続きが遅れる
原因:雇用保険被保険者証や源泉徴収票が届かないと、転職先での手続きが進みません。
対策:転職先が決まっている場合は、必要書類が揃う見込みを転職先にも伝えておきます。源泉徴収票が間に合わなければ確定申告で対応できます。
最大の対策は依頼先の確認
6つのうち最初の1つが、他のトラブルの引き金にもなります。 交渉できない依頼先を選んでしまうと、会社が何か言ってきた時点で手続きが止まり、 そこから先の書類のやり取りも進まなくなるためです。
確認するのは「弁護士法人か」「労働組合か」「それ以外の民間業者か」の1点です。サイトの運営者情報・特定商取引法に基づく表記を見れば分かります。 「顧問弁護士監修」と書かれていても、弁護士が代理人として対応するとは限りません。
それぞれができる範囲は退職代行の3種類に条文とともにまとめています。
「訴える」と言われても退職はできる
退職を伝えた際に会社から強い言葉が返ってくることがありますが、退職したこと自体を理由に損害賠償が認められることは通常ありません。 民法627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。 この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。
とはいえ、会社が請求すると言ってくること自体は起こりえます。実際に書面が届いた場合、対応できるのは弁護士だけです。 そうした展開が予想される状況なら、最初から弁護士に依頼しておく方が結果的に負担が軽くなります。
依頼前のチェックリスト
- 運営元の種類を確認したか
- 交渉が必要になりそうか判断したか有給の残日数、未払い賃金の有無、会社の反応の予想から考えます
- 私物・書類を持ち出したか就業規則、給与明細、勤怠記録、雇用契約書
- 総額と追加費用を確認したか
- 会社から連絡が来た場合の対応を決めたか
- 貸与品の返却方法を決めたか
代行を使わない選択肢も検討する
上司に直接会いたくないという理由だけであれば、 退職届を内容証明郵便で送る方法があります。 退職の意思表示が会社に到達したことを記録に残せるうえ、費用は郵便料金だけです。
退職届は会社の受理を必要としません。 意思表示が到達した時点で効力が生じ、期間の定めのない雇用契約なら2週間の経過で終了します。
進め方は退職代行を使わずに自分で辞める方法と退職届が受理されない場合の対処法で解説しています。