有給休暇を取った日の賃金
年次有給休暇は「有給」なので、休んだ日にも賃金が支払われます。 ただしいくら支払われるかは1通りではありません。 労働基準法39条9項が3つの方法を挙げており、 どれを使うかは就業規則などで定められています。 退職前にまとめて消化するときは、この違いで受け取る額が変わることがあります。
このページは労働基準法39条9項・12条・136条の条文と、厚生労働省「年次有給休暇(確かめよう労働条件)」、千葉労働局「平均賃金(労働基準法第12条)」に基づいています。
3つの方法から会社が選ぶ
1. 平均賃金
直前3か月に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です(労働基準法12条)。日給・時給・出来高払制の場合は、賃金総額を労働した日数で割った額の60%が最低保障になります。
暦日数で割るため、勤務日数が少ない月があると通常の賃金より低くなることがあります。
2. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
その日にふつうに働いていたら支払われたはずの額です。月給制ならその日の分の月給、時給制なら所定労働時間×時給になります。
多くの会社がこの方法を採用しています。月給制なら欠勤控除がされない形で反映されます。
3. 標準報酬月額の30分の1に相当する額
健康保険法40条1項の標準報酬月額を30で割った額です。5円未満の端数は切り捨て、5円以上10円未満の端数は10円に切り上げます。
この方法を採るには労使協定が必要です(労働基準法39条9項ただし書)。就業規則の定めだけでは足りません。
条文は「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより」支払うとしています。 つまりあらかじめ決めておいた1つの方法を使うという建て付けで、 その都度、会社に有利な方法を選ぶことはできません。
実務ではほとんどが「通常の賃金」
3つのうち、実際に多く採用されているのは2番目の 「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」です。 計算が簡単で、月給制なら欠勤控除をしないだけで済むためです。
そのため月給制の人は、有給を取っても給与明細の額が変わりません。 逆にいえば、有給を取った日に控除がされている場合は、 有給として処理されていない可能性があります。 給与明細の勤怠欄と控除欄を確認してください。
平均賃金が使われると額が下がることがある
1番目の平均賃金は、直前3か月の賃金総額をその期間の総日数(暦日数)で割ります。 労働日数ではなく暦の日数で割るため、 月給制の人の1日分としては通常の賃金より低くなるのが普通です。
日給・時給・出来高払制の場合は、賃金総額を労働した日数で割った額の60%が最低保障とされ、 原則の計算額がこれを下回るときは最低保障の額になります。 平均賃金そのものの計算は解雇予告手当 計算機で確認できます。同じ計算方法です。
有給を取ったことで不利益に扱ってはならない
労働基準法136条は、使用者は39条1項から4項までの規定による有給休暇を 取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと定めています。厚生労働省は具体例として、精皆勤手当や賞与の額の算定に際して、 年次有給休暇を取得した日を欠勤または欠勤に準じて取り扱うことを挙げています。
有給を取ったから皆勤手当がつかない、賞与の査定が下がる、といった扱いは この趣旨に反します。心当たりがある場合は労働基準監督署に相談してください。
退職前にまとめて消化するとき
退職前の有給消化中も、通常どおりこの賃金が支払われます。 最終給与にまとめて反映されることが多いため、最終給与の額が想定と違う場合は、有給分が入っているかを確認してください。
最終給与がいつ・いくら支払われるかは最終給与はいつ・いくら入るかにまとめています。
よくある質問
有給休暇を取った日の給料はいくらですか?
労働基準法39条9項は、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、または健康保険法40条1項の標準報酬月額の30分の1に相当する額の3つを挙げ、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより支払わなければならないとしています。どれを使うかは会社が就業規則で決めますが、一度決めた方法を都度使い分けることはできず、統一して適用する必要があります。
月給制なら有給を取っても給料は変わりませんか?
多くの会社が「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を採用しており、月給制であれば有給を取っても月給がそのまま支払われるため、給与明細上は変化がありません。欠勤控除がされないという形で有給が反映されます。逆に、有給を取った日に控除がされている場合は、有給として処理されていない可能性があるため確認が必要です。
標準報酬月額の30分の1で計算されることはありますか?
あります。ただし労働基準法39条9項ただし書により、この方法を採るには労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要です。就業規則に書いてあるだけでは足りません。なお標準報酬月額の30分の1を出すときは、5円未満の端数は切り捨て、5円以上10円未満の端数は10円に切り上げると条文に明記されています。
時給制やシフト制で1日の時間がばらばらの場合は?
「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を採る場合は、その日の所定労働時間に時給を掛けた額になります。所定労働時間が日によって違うなら、有給を取った日の所定労働時間で計算します。所定労働時間が定まっていない働き方の場合は平均賃金による方法が使われることがあります。どの方法かは就業規則で確認してください。