陸上の労働者にはない制度として、送還があります。遠隔地や外国で契約が終了した場合に、船舶所有者の費用で帰してもらえる仕組みです。
船員法47条1項
船舶所有者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、遅滞なくその費用で、船員の希望により、雇入港又は雇入港までの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地(雇入れのため雇入港に招致した船員及び未成年者の船員にあつては、雇入港若しくは雇入契約の成立の時における船員の居住地又はこれらのいずれかまでの送還に要する費用の範囲内で送還することのできるその他の地)まで船員を送還しなければならない。ただし、送還に代えてその費用を支払うことができる。
出典: 船員法47条1項
送還の対象になる場合
同項各号が挙げているのは、おおむね次の場合です。
- 39条により雇入契約が終了したとき(船舶の沈没・滅失など)
- 40条1号(著しく職務に不適任)または6号(やむを得ない事由)により船舶所有者が解除したとき
- 40条5号または41条1項3号(負傷・疾病のため職務に堪えない)により解除したとき。ただし職務外の負傷・疾病について船員に故意または重大な過失があったときを除く
- 41条1項1号(船舶が国籍を失った)または2号(労働条件と事実が著しく相違する)により船員が解除したとき
- 42条により船舶所有者が解除したとき
- 43条2項により船員が解除したとき
- 雇入契約が期間の満了によって終了したとき など
注目すべきは、41条1項2号(労働条件と事実の著しい相違)で船員が解除した場合も対象になっている点です。
出典: 船員法47条1項各号
自分から辞める場合はどうか
同項5号は「第四十二条の規定により船舶所有者が雇入契約を解除したとき」としています。
つまり、42条により船員の側から期間の定めのない雇入契約を解除した場合は、この号には該当しません。
自己都合で辞める場合、送還の対象にならないことがあります。自分のケースが該当するかを、会社と地方運輸局に確認してください。
費用の支払いに代えることができる
ただし書により、送還に代えて費用を支払うことも認められています。実際に手配してもらうのか、費用を受け取って自分で帰るのかは、状況によります。
確認しておくこと
退職を考えた段階で、次を確認してください。
- 自分のケースが送還の対象になるか
- 対象になる場合、送還先はどこか(雇入港か、居住地か)
- 送還してもらうのか、費用の支払いを受けるのか
特に外航船に乗っている場合、この確認は金額として大きな意味を持ちます。
失業手当と雇止手当
船員法には、雇用保険とは別に、船舶所有者が支払う手当の定めがあります。
失業手当(45条): 39条により雇入契約が終了したとき、その翌日から2か月の範囲内において、失業期間中毎月1回その失業日数に応じ給料の額と同額を支払わなければならない。
雇止手当(46条): 40条6号による解除、41条1項1号・2号による船員からの解除、42条による解除(船舶所有者から)、43条1項による終了、83条の健康証明書を受けられないための解除に該当する場合、遅滞なく1か月分の給料の額と同額を支払わなければならない。
これらは船員法上の制度で、雇用保険の失業給付とは別のものです。
出典: 船員法45条・46条
相談先
- 地方運輸局の船員労務官
- 会社の海務・人事の担当