「辞めた後、近くで開業してはいけない」と言われることがあります。整理します。

まず書面を確認する

署名した書面に競業避止の条項があるかを確認してください。

  • 雇用契約書
  • 入職時の誓約書
  • 就業規則

条項がなければ、退職後にどこで働くか、どこで開業するかは基本的に自由です。職業選択の自由は憲法22条1項が保障しています。

条項があっても常に有効とは限らない

競業避止の合意があっても、無制限に有効というわけではありません。有効性は次のような点から判断されます。

  • 守るべき院の利益があるか(独自の技術やノウハウなど)
  • 制限の期間(何年間か)
  • 制限の地域的範囲(半径何キロか)
  • 制限される業務の範囲
  • 代償措置があるか(手当の支給など)
  • 従業員の地位(誰にでも一律に課しているか)

期間が長すぎる、範囲が広すぎる、代償がまったくない、といった場合は無効と判断されることがあります

判断に迷う場合は、書面を持って弁護士または総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)に相談してください。

条項の有無にかかわらず問題になること

競業避止の条項がなくても、次の行為は別の問題を生みます。

患者情報の持ち出し

施術録や患者名簿の写しを持ち出すことは、守秘義務(柔道整復師法17条の2、あはき法7条の2)の問題になります。これは退職後も続く義務です

在職中の営業活動

在職中に、自分の開業先へ患者を誘導することは、職務専念義務や誠実義務に反すると評価され得ます。

患者の組織的な引き抜き

退職と同時に多数の患者を自分の院に移すような行為は、争いの原因になります。

安全な進め方

  • 在職中は情報収集と準備にとどめる
  • 患者情報を持ち出さない
  • 在職中に営業活動をしない
  • 開業の場所を決める前に、競業避止の条項を確認する

「患者が自分の意思で来てくれた」場合と「自分が誘導した」場合では、評価が変わります

スタッフの引き抜き

同僚を誘って一緒に独立する場合も、態様によっては問題になり得ます。院の運営に支障が出るような組織的な引き抜きは避けてください。

相談先

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)
  • 弁護士(法テラスで無料相談を受けられる場合があります)