家に帰ってから壁面装飾を作る。
週末は行事の準備。
それを「やりがい」と呼んでいいのか。
保育士のあなたが感じているその違和感は、実は、正しい感覚です。その仕事は「やりがい」ではなく、違法な過労かもしれません。
保育士の隠れた長時間労働の実態
厚生労働省の調査によると、保育士の平均的な勤務時間は「8時間」とされていますが、実際には以下の業務を園外で行っています。
- 壁面装飾(季節ごとの壁飾り):1~3時間/週
- 行事企画・準備(運動会、発表会など):5~10時間/月
- 書類作成(児童票、指導案、連絡帳の返答):3~5時間/週
- 製作物の準備(子どもたちが使う教材):2~4時間/週
- 子どもたちの送迎後の片付け、清掃
- 翌日の準備
- ミーティング
多い人では、実際の労働時間が1日10~12時間に達しています。これは、給与に反映されていない「隠れた過労」なのです。
「みんなやってるから」が思考停止を生む構造
保育士の職場では、以下のようなマインドセットが根強くあります。
- 「子どもたちのためだから、やって当然」
- 「保育士は子どもを思う仕事だから、給料は二の次」
- 「持ち帰り仕事をしない先生は、子どもへの愛情が足りない」
このような圧力の中にいると、あなたの判断力が曇ります。「これは当たり前」「これは我慢すべき」という思い込みが生まれてしまうのです。
でも、冷静に考えてみてください。持ち帰り仕事は、労働基準法違反です。
労働基準法から見た持ち帰り仕事とサービス残業
日本の労働基準法では、以下のように定められています。
労働基準法37条:時間外労働に対する割増賃金
「使用者は、労働者に1日8時間、週40時間を超えて労働させたときは、その時間に対して割増賃金(25%以上50%以下)を支払わなければならない」
つまり、保育園での仕事が8時間を超えた場合、超過分には割増賃金が発生する義務があります。
自宅での「業務に必要な仕事」も労働時間に含まれます。
壁面装飾が園での見栄えを整えるためのものなら、それは業務です。書類作成が園の事務必須業務なら、それも業務です。
つまり、あなたが家で行っている多くの仕事は、給与が発生するべき労働時間なのです。
具体的な対処方法
では、あなたが「隠れた過労」から身を守るために、何をすべきか。
1. 労働時間を記録する
毎日、以下を記録してください。
- 実際の勤務時間
- 園外での仕事の時間(家での持ち帰り仕事、買い物の時間など)
- サービス残業の時間
記録は、後々、証拠として使えます。
2. 園に対して「持ち帰り仕事をしない」宣言をする
勇気が必要ですが、以下のように伝えることが重要です。
「壁面装飾は、園の業務時間内に作成したいので、業務時間の配分を見直してほしい」
「書類作成が業務時間内に終わらないなら、業務の効率化や人員増加を検討してほしい」
3. 労働基準監督署に相談する
園が改善しない場合、最寄りの労働基準監督署に相談できます。
- 無料で相談できます
- 匿名で申告できます
- 実名申告でも、報復は法律で禁止されています
退職を含めた選択肢
もし、園が改善しない場合、あなたは以下の選択肢があります。
1. 転職:待遇が良い園を探す
園によって、持ち帰り仕事の量は全く異なります。中には、持ち帰り仕事をほぼ認めない園もあります。
2. 異業種への転職
保育士のキャリアは、保育園だけではありません。
- 学童保育
- 病院の保育室
- 企業の託児所
- 教育関連企業
保育士としての経験は、多くの場所で活かせます。
3. 勤務時間短縮の交渉
フルタイム勤務を辞めて、パート勤務に切り替えることで、持ち帰り仕事を減らすという選択肢もあります。
最後に
あなたが感じている「何かおかしい」という感覚は、正しいです。
子どもたちへの想いは大切です。でも、その想いを理由に、自分の労働環境が不当に扱われてはいけません。
あなたが家に帰って、疲弊しながら壁面装飾を作る時間は、あなた自身の人生の時間です。その時間を取り戻すために、声を上げてください。
あなたが過労から解放されて、心に余裕を持つことが、実は、子どもたちにも一番いい環境を作ることになるのです。