「せんせい、あしたもくる?」
その言葉が胸に刺さって、辞められない。
保育士さんなら、そんな気持ちを何度も経験しているのではないでしょうか。子どもたちの純粋な期待を受けて、責任感に押しつぶされそうになる。
その気持ちはとても大切です。でも、その気持ちに縛られて、自分の人生を後回しにしなくていいんです。
子どもには予想以上の適応力がある
まず、知っておいてほしい事実があります。
子どもは、私たち大人が思っているより、環境の変化に適応する能力が高いです。
発達心理学の研究によると、子どもは新しい環境に入ると、数週間から数ヶ月で新しい先生との関係を築くことができます。
保育園では、毎年クラスが上がるたびに、先生が変わります。進級時には、新しい先生との関係を作っていきます。子どもたちは、その都度、その新しい先生と信頼関係を築いているのです。
つまり、あなたが辞めた時も、子どもたちは新しい先生と新しい関係を築いていく。それは、子どもたちの心が壊れることではなく、子どもたちの成長の一環なのです。
「子どもが心配」という気持ちと「子どもは大丈夫」という事実の両立
「でも、急に先生が代わったら、子どもたちが寂しい思いをするんじゃないか」
その気持ちも、よく理解できます。でも、考えてみてください。
毎年、保育園では先生の異動が起きています。子どもたちは、その都度、新しい先生に慣れていきます。園には複数の先生がいて、その時々で子どもたちをサポートしています。
あなたが「唯一無二の先生」として存在しているのではなく、園全体として、子どもたちをケアする体制ができているのです。
引き継ぎで子どもたちを守る方法
とはいえ、責任感の強いあなたなら、「きちんと引き継ぎをして、子どもたちへの影響を最小限にしたい」と考えているでしょう。その気持ちが、子どもたちを本当に守ります。
1. 子どもたちの個別記録を充実させる
各子どもについて、以下をまとめてください。
- 好きな遊び、苦手なこと
- 友達関係(誰と仲がいいか、トラブルが多い相手は誰か)
- 親への伝える内容(家庭で注意すべき点、最近の成長など)
- 食べ物のアレルギー・好き嫌い
- 排泄習慣(おむつが必要な子の場合、何時頃の対応が必要か)
- 家庭環境(両親の就労状況、兄妹の有無など)
2. 年度末へのカウントダウンの工夫
突然の別れより、段階的な別れの方が、子どもたちにも負担が少ないです。
- 「〇月で先生は新しいクラスに行くよ」と早めに伝える
- 一緒に過ごしたことの思い出を話す
- 新しい先生を紹介する時間を作る
3. 保護者との連携
保護者に対しても、事前に説明し、「新しい先生への信頼を築くために、保護者さんも協力してほしい」と伝えることが大切です。
「あなたが笑顔でいられない状態で、子どもたちと接することの方が影響が大きい」
もう一つ、重要な視点があります。
もし、あなたが今、心身疲弊の状態で保育をしているなら、どうなるでしょうか。
- 子どもたちの話をしっかり聞く余裕がなくなる
- イライラが増して、言い方が厳しくなる可能性
- 子どもたちも、あなたの疲れに気づく
- 保育の質が落ちる
つまり、あなたが心に余裕を持って、笑顔で子どもたちに接することが、子どもたちにとって一番の良い環境なのです。
疲弊した保育士がいた場合、その子どもたちのケアの質は確実に落ちます。だからこそ、あなたが「自分の限界を認識して、新しい環境でリスタート」することは、結果として子どもたちのためになっているのです。
保育士の有効求人倍率からわかること
今、保育士の有効求人倍率は約3倍(地域によってはそれ以上)です。
つまり、保育士1人に対して、3つの求人がある状態です。これは、保育士の需要がそれだけ高いということ。そして同時に、園は別の保育士を見つけることが可能であることを示しています。
あなたが辞めたら、園は新しい保育士を採用します。その人が子どもたちの先生になる。それは自然なことなのです。
法律とあなたの権利
法律上、あなたは退職の意思を示してから2週間で、雇用契約を終了させることができます(民法627条)。
「子どもたちがいるから」という理由で、退職を拒否することはできません。
ただし、円満退職のためにも、就業規則に従い、2~3ヶ月前の申し出が一般的です。
最後に
あなたの「子どもたちが気がかり」という気持ちは、保育士として本当に大切な心です。その心を持ちながら、同時に「自分の人生も大切にする」という決断をしてください。
丁寧な引き継ぎをすれば、子どもたちは大丈夫です。新しい先生を信頼して、成長していきます。
そして、あなたが新しい環境で元気に過ごすことが、あなたの心の中に「保育士として子どもたちと過ごした時間」を大切に保つことにもつながるのです。
あなたが元気でいられることが、子どもたちへの、最高のプレゼントなのです。