待ち時間が長いと怒鳴られる。会計ミスがないか何度も確認しても、苦情を言われる。

医療事務は、患者さんからのクレームやハラスメントの最前線にいます。

医療事務が受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)の実態

医療事務職員が受けるハラスメントは、予想以上に深刻です。

よくあるカスハラの事例

  • 「待ち時間が長い」と受付で怒鳴られる
  • 「お前の対応が悪い」と人格否定される
  • 「給料泥棒」「無能」などの暴言
  • 同じ質問を何度も繰り返され、そのたびに説明させられる
  • 会計の際に「詐欺だ」と言われる
  • 予約ルールに従わないのに「説明が悪い」と責められる
  • 待ち時間中に、医療以外のお願いをされ、対応できないと文句を言われる

これらは、決して「患者さんの立場では仕方ない」という言い訳で許容されるべきではありません。

患者からの暴言もハラスメントであること

重要な認識です:患者さんからの暴言も、職場でのハラスメントです。

以下の法的背景があります。

2024年以降の「カスハラ対策」の社会的動き

  • 日本医師会が「患者からのハラスメント対策」を要件に
  • 労働組合が「医療職のハラスメント対策」を強化
  • 厚生労働省が「職場のハラスメント対策」の適用範囲を拡大

つまり、企業(医療機関)には、患者からのハラスメントから職員を守る義務があります。

医療機関の窓口が感情のはけ口にされやすい理由

なぜ医療事務が標的になるのか

  • 医者ではなく、相対的に「弱い立場」と見なされる
  • 直接患者さんと接する窓口業務のため、顔が見える
  • 患者さんが不安やストレスを抱えており、感情的になりやすい
  • 医療機関側の対応(待ち時間の長さなど)に対する不満が、事務職員に向かう

責任の所在

  • 待ち時間が長いのは医療機関全体の問題(医師の診療時間、患者数の調整など)
  • しかし、患者さんの怒りは受付・窓口の事務職員に向かう
  • これは明らかに不公正です

対処法:その場での工夫

カスハラを受けた際の、その場での対応方法です。

対処法1:感情的にならない冷静さを保つ

  • 患者さんの怒りは、あなたへの個人的な攻撃ではなく、医療機関全体への不満
  • 相手の怒りに同調して、感情的になってはいけません
  • 深呼吸をして、冷静さを保つ

対処法2:謝罪する(ただし自分の非を認めない形で)

「ご不便をおかけして申し訳ございません」と言う。

  • 実際のミスがなくても、患者さんが不快に思ったことに対して「申し訳ない」と言うことは可能
  • ただし「私の責任です」と自分の非を認める必要はない
  • 医療機関全体として、不便をおかけしていることに対する謝罪

対処法3:上司を呼ぶ

患者さんの要求が不合理な場合は、すぐに上司を呼びましょう。

  • 「かしこまりました。管理者にお取り次ぎいたします」とだけ言う
  • 交渉や説得をしようとしてはいけません
  • 上司に任せる

対処法4:聞き役に徹する

延々と苦情を言われる場合、無理に終わらせようとするのは逆効果です。

  • 患者さんが言いたいことを言い終わるまで、聞く
  • 「そうですね」「わかります」とうなずく
  • 最後に「貴重なご意見ありがとうございます。お伝えします」と言って区切る

組織的な対処:医療機関に改善を要求する

個人的な工夫だけでは、カスハラは解決しません。医療機関全体での対策が必要です。

医療機関に要求できることリスト

対策効果
カスハラ対策の方針を文書化患者さんへの周知による抑止力
スタッフ教育の実施対応方法を学ぶ
複数人対応の実現一人では対応しない
録音・記録の許可証拠を残す
カウンセリング制度の導入ハラスメント被害への心理的支援
休暇の取得推進ストレス軽減
院長・管理者への報告体制問題のある患者への指導

対策を要求する手順

  1. 1 直属上司に相談する
  1. 1 改善を要求する
  1. 1 改善されない場合は、さらに上位者へ

ハラスメントが疑われる場合の相談先

深刻なハラスメントを受けている場合は、以下の機関に相談できます。

相談先対応
都道府県労働局職場のハラスメント相談(無料・秘密厳守)
労働基準監督署違法な扱いについての相談
医療安全支援センター医療機関内のトラブル相談
地域の福祉事務所生活全般への相談
精神科・心療内科ハラスメム被害による心身の不調への治療

「患者さんのために」という圧力への対抗

医療機関で働いていると、以下のような圧力を感じるかもしれません。

  • 「患者さんのためなら我慢するべき」
  • 「医療職は患者さんを優先すべき」
  • 「患者さんの要望には応じるべき」

これは間違っています。

患者さんに尽くすことと、患者さんからの不当な扱いを受け入れることは、別です。

医療職が心身ともに健康であることが、患者さんへの最高のサービスになります。

退職も正当な選択肢であること

カスハラが改善されず、心身が壊れそうであれば、退職も正当な選択肢です。

  • あなたの健康がこれ以上壊れてはいけません
  • 医療機関がカスハラ対策を取らないのは、経営者の責任
  • あなたが身を引いて、経営陣が問題に直面することで、初めて改善される場合もあります

転職先の選択

医療事務の経験は、医療機関以外でも活かせます。

  • 医療系IT企業
  • 医療保険会社
  • ヘルスケア関連企業
  • コンサル会社

これらの職場では、患者さんからの直接的なハラスメントを受ける可能性は低いです。

覚えておいてください

「患者さんからの暴言や理不尽なクレームに耐えること」は、医療職の責務ではありません。

医療機関で働く者として、確かに患者さんに丁寧に対応することは大切です。

しかし、自分の心身を傷つけてまで、患者さんの不当な要求に応じる義務はありません。

もし今、カスハラで苦しんでいるのであれば、以下の3つのステップを検討してください。

  1. 1 まず、組織に改善を要求する(改善の余地があるか確認する)
  2. 2 改善されない場合は、専門家に相談する(弁護士、労働局など)
  3. 3 それでも改善されなければ、退職を検討する(あなたの健康が第一)

あなたが元気でいることが、一番大切です。