「同業他社に移りたいが、専属だから無理だと言われた」という相談があります。保険業法の条文から整理します。

保険業法282条の一社専属制

保険業法282条は次のように定めています。

生命保険会社(外国生命保険会社等を含む。以下この編において同じ。)又はその委託を受けた者は、他の生命保険会社の生命保険募集人に対して、保険募集の委託又は再委託をしてはならない。

2 生命保険募集人は、他の生命保険会社の役員若しくは使用人若しくはこれらの者の使用人を兼ね、又は他の生命保険会社の委託若しくはその委託を受けた者の再委託を受けて保険募集を行い(後略)ことができない。

条文が禁じているのは「兼ねること」です。つまり、ある生命保険会社の募集人でありながら、同時に別の生命保険会社の募集人としても活動することができない、という規制です。

出典: 保険業法282条1項・2項

例外がある

同条3項は、政令で定める場合にはこの制限が適用されないとしています。

前二項の規定は、生命保険募集人が二以上の所属保険会社等を有する場合においても、その保険募集に係る業務遂行能力その他の状況に照らして、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして政令で定める場合には、適用しない。

いわゆる乗合代理店が複数社の商品を扱えるのは、この例外にあたる場合です。自分のケースが例外に該当するかは、移る先の代理店や保険会社が判断できます

出典: 保険業法282条3項

退職後の転職を直接禁じる条文ではない

282条が規制しているのは「兼ねること」であって、辞めた後に他社で募集することを一律に禁じる条文ではありません。

ただし、会社との契約に競業避止の条項が入っていることは別問題です。就業規則や委託契約書、入社時に署名した誓約書に、退職後一定期間の競業を制限する定めがないかを確認してください。競業避止の合意が有効かどうかは、期間・地域・対象業務の範囲、代償措置の有無などから個別に判断されます。

確認しておくこと

  • 就業規則や委託契約書に競業避止の条項があるか
  • 誓約書に署名しているか、その内容の控えがあるか
  • 退職後の期間や範囲がどう定められているか

書面の控えを持っていない場合、退職前にコピーをもらっておいてください。退職後に「見せてほしい」と頼んでも応じてもらえないことがあります。

判断に迷う場合は、総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)や弁護士に相談してください