退職を考える理由として、事業所の方針との食い違いを挙げる人がいます。この点は法律に定めがあります。
介護保険法69条の34
介護支援専門員は、その担当する要介護者等の人格を尊重し、常に当該要介護者等の立場に立って、当該要介護者等に提供される居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス若しくは地域密着型介護予防サービス又は特定介護予防・日常生活支援総合事業が特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
出典: 介護保険法69条の34第1項
「特定の事業者に不当に偏ることのないよう」と明記されています。
板挟みになる構造
居宅介護支援事業所が、訪問介護やデイサービスなどを併設している法人に属している場合、次のような圧力が生じることがあります。
- 自社サービスの利用を増やすよう求められる
- 他社サービスを位置づけると理由を問われる
- 稼働率の目標が示される
この構造そのものが、法律の求める公正中立と緊張関係にあります。
自分を守るためにできること
記録を残す
ケアプランに位置づけた理由を、アセスメントと本人の意向に基づいて記録してください。
「本人がこう希望した」「この課題に対してこのサービスが適当と判断した」という筋道が記録に残っていれば、後から説明できます。
指示の内容を記録する
自社サービスへの誘導を求められた場合、いつ、誰から、どのような指示があったかを記録してください。
口頭の指示は後から確認できません。可能ならメールなど記録の残る形でやり取りしてください。
相談先を確認する
- 保険者(市区町村の介護保険担当課)
- 都道府県の介護支援専門員協会
- 地域包括支援センター
運営基準に関わる問題であれば、保険者が指導の権限を持っています。
退職の判断
方針の食い違いは、話し合いで解決しないことがあります。事業所の収益構造に関わる問題だからです。
「自分が我慢すれば」と考えて続けると、記録と実態が食い違う状態が積み重なります。これは自分の責任問題にもなり得ます。
独立系の事業所や、地域包括支援センター、施設のケアマネジャーなど、構造の違う職場に移るという選択肢があります。
転職の面接で、その事業所が併設サービスを持っているか、位置づけの方針をどう考えているかを確認してください。
退職理由の伝え方
事業所に伝える理由は「一身上の都合により」で足ります。方針への不満を細かく述べる必要はありません。
転職の面接では、「公正中立な立場でケアマネジメントに取り組みたい」という前向きな表現で説明できます。前職の批判は避けてください。