消防士は地方公務員であり、民間企業の労働者とは退職の法的な仕組みが違います。
消防職員の身分取扱いは地方公務員法による
消防組織法16条1項は次のように定めています。
消防職員に関する任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の定めるところによる。
つまり消防職員は地方公務員です。退職は「辞職」として扱われます。
出典: 消防組織法16条1項
任命権者は誰か
消防組織法15条1項が定めています。
消防長は、市町村長が任命し、消防長以外の消防職員は、市町村長の承認を得て消防長が任命する。
したがって、消防長以外の消防職員にとっての任命権者は消防長です。辞職願の宛名も消防長になるのが基本です。
出典: 消防組織法15条1項
民間の「2週間で辞められる」は当てはまらない
民間企業の退職でよく引用される民法627条1項は、雇用契約についての規定です。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
公務員と行政庁の関係は雇用契約ではなく任用という行政上の関係とされているため、この条文がそのまま適用されるわけではありません。「2週間前に出せば必ず辞められる」という前提で動かないでください。
出典: 民法627条1項
辞職は承認によって効力が生じる
辞職は任命権者の承認(依願免職の発令)によって効力が生じます。とはいえ、辞職の意思を示している職員を無期限に拘束することはできません。正当な理由なく長期間にわたって承認を拒み続けることは、権利の濫用と評価され得ます。
進め方の目安
- 1 直属の上司(署の係長・課長など)に退職の意思を口頭で伝える
- 2 所属の人事担当と、退職日と手続きの流れを確認する
- 3 辞職願を提出する(所属の系統を通じて)
- 4 発令を待つ
- 5 貸与品の返納、書類の受け取り
消防本部ごとに内部の手続きや様式が定められています。具体的な提出方法は人事担当に確認してください。
承認が下りないと言われたら
「人員が足りない」「年度末まで待て」と言われることがあります。
- 退職の意思をいつ、誰に伝えたかを記録に残す
- 話が進まない場合は、辞職願を書面で提出し控えを保管する
- 体調が理由であれば診断書を添える
健康を損なっている場合は、辞職より先に休職の制度を確認してください。地方公務員法28条2項は、心身の故障のため長期の休養を要する場合に休職とすることができると定めています。