「提示された年収が今より高いから、条件は良くなる」。この判断で転職して、後から想定と違ったと感じる人がいます。公務員の収入は、月給以外の部分が大きいためです。
額面だけで比べると間違える理由
公務員の給与は、給料表に基づく基本給に各種手当が加算される構成です。求人票に書かれた「年収◯万円」と比べるときは、次のものを足して考える必要があります。
| 項目 | 確認するところ |
|---|---|
| 基本給 | 給料表の号給 |
| 地域手当 | 勤務地によって支給率が変わる |
| 扶養手当 | 家族構成による |
| 住居手当 | 家賃額に応じた支給 |
| 通勤手当 | |
| 時間外勤務手当 | 実績による |
| 期末手当・勤勉手当 | 年2回 |
まず、直近1年間の源泉徴収票の支払金額を確認してください。これが比較の出発点になります。給与明細1か月分から推測すると、手当と賞与の分がずれます。
民間と比べるときの3つの差
1. 昇給の仕方が違う
公務員の給与は号給が毎年上がる仕組みで、年齢とともに緩やかに上がっていく形になっています。民間では、企業や職種によって上がり方が大きく異なります。
- 若いうちは公務員のほうが高く、後から民間が追い越す
- 逆に、成果によって早期に上がる企業もある
転職時点の年収だけでなく、5年後、10年後の見通しを求人や面接で確認してください。
2. 賞与の性質が違う
期末手当・勤勉手当は、基準日に在職していれば支給されるのが基本です。民間の賞与は業績に連動するため、支給されない年がありうるという違いがあります。
年収に占める賞与の割合が高い企業に移る場合、この点は確認しておく価値があります。
3. 退職手当と退職金の違い
公務員の退職手当は、勤続年数と退職理由に応じて支給率が決まります。中途で辞めると、定年まで勤めた場合との差が大きくなります。
一方、転職先に退職金制度があるとは限りません。企業型確定拠出年金のみという場合もあります。ここは求人票では分かりにくいため、内定時に確認してください。
年金がどう変わるか
公務員の年金は、平成27年10月の被用者年金一元化により厚生年金に統一されています。転職しても厚生年金であることに変わりはありません。
ただし、共済組合独自の給付(退職等年金給付など)については、加入期間に応じた扱いになります。詳細は共済組合に確認してください。
福利厚生の差
金額に表れないため見落とされがちですが、次のような違いがあります。
- 共済組合の各種給付(貸付、宿泊施設、保養所など)
- 官舎・宿舎の有無と家賃負担
- 育児・介護に関する休業制度の取得しやすさ
- 健康診断や人間ドックの補助
官舎に住んでいる場合は、退職後の住居費が増えます。ここは年収の比較に直接影響するため、退職前に転居後の家賃を見積もってください。
比較のやり方
紙に2列で書き出します。
| 項目 | 現在 | 転職先 |
|---|---|---|
| 額面年収 | 源泉徴収票の支払金額 | 提示された額 |
| 賞与の性質 | 基準日在職で支給 | 業績連動か固定か |
| 住居費 | 官舎なら実負担額 | 転居後の家賃 |
| 退職金制度 | 退職手当の見込み | 制度の有無 |
| 5年後の見通し | 号給の推移 | 昇給の仕組み |
ポイント
短期の額面ではなく、住居費と退職金まで含めて比べます。額面が上がっても、官舎を出て家賃負担が増えれば手元に残る額は変わらないこともあります。
下がる場合の考え方
未経験の業界に移る場合、一時的に年収が下がることは珍しくありません。判断の軸になるのは、下がった状態が続くのか、数年で戻る見込みがあるのかです。
面接の場で、その職種の昇給の実績や、入社後何年でどの水準になるかを聞いてください。答えられない企業であれば、その事実自体が判断材料になります。