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傷病手当金と年金の調整

傷病手当金を受けているあいだに障害年金や老齢年金が決まると、両方をそのまま受け取ることはできません。 ただし打ち切られて終わりでもなく、条文は「支給しない。ただし少ないときは差額を支給する」という形で組み立てられています。 どちらが多いかで受け取る額が決まる仕組みです。

このページは健康保険法103条・108条健康保険法施行規則89条に基づいています。実際の支給額は加入している保険者が決定するため、 個別の金額は協会けんぽの支部または健康保険組合に確認してください。

障害厚生年金との調整(108条3項)

健康保険法108条3項は、傷病手当金を受けるべき人が同一の傷病について障害厚生年金を受けられるときは、傷病手当金を支給しないと定めています。ただし、ただし書で差額の支給が用意されています。

ただし、その受けることができる障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき 国民年金法による障害基礎年金の支給を受けることができるときは、 当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額 (以下この項において「障害年金の額」という。)が、 第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、当該額と(中略)の差額を支給する。

ここで2つ、見落とされやすい点があります。

  • 「同一の傷病」であることが条件傷病手当金の対象になっている病気やケガと、障害厚生年金の支給事由が同じ場合の話です。 別の傷病による障害厚生年金であれば調整されません
  • 障害基礎年金だけなら調整されない条文が挙げているのは障害厚生年金です。障害基礎年金の額が合算されるのは、 同一の支給事由で障害厚生年金も受けられるときに限られます

調整額は「年金額 ÷ 360」で日額に直す

比較するのは1日あたりの金額どうしです。年金は年額で決まるため、日額に直す必要があります。 健康保険法施行規則89条1項がその計算方法を定めています。

(前略)受けるべき障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき障害基礎年金の支給を 受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)を三百六十で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)とする。

計算例

障害厚生年金と障害基礎年金の合計が年間1,200,000円の場合、 1,200,000 ÷ 360 = 3,333.33… で1円未満を切り捨てて3,333円。 傷病手当金の日額が6,147円なら、3,333円のほうが少ないので 差額の2,814円が1日あたり支給されます。 逆に年金の日額のほうが多ければ、傷病手当金は支給されません。

365ではなく360で割る点に注意してください。「1か月30日 × 12か月」で日額に直す考え方です。

報酬や出産手当金が絡むと比較する相手が変わる

108条3項は、報酬を受けられるか、出産手当金を受けられるかの組み合わせで4つの区分を設けています。 差額を出すときに障害年金の額と比べる相手が変わる仕組みです。

  • 報酬も出産手当金もない → 障害年金の額との差額
  • 報酬はないが出産手当金がある → 出産手当金の額と障害年金の額のいずれか多いほうとの差額
  • 報酬があり出産手当金はない → 報酬の額と障害年金の額のいずれか多いほうとの差額
  • 報酬も出産手当金もある → 報酬と出産手当金の合算額と障害年金の額のいずれか多いほうとの差額

いずれの区分でも、比較の対象になる額が傷病手当金の日額を超える場合はその日額が上限になります。 重ねて受け取れる額が傷病手当金を上回ることはない、という設計です。

老齢年金との調整は「退職後」だけの話

健康保険法108条5項は、老齢退職年金給付を受けられるときは傷病手当金を支給しないと定めていますが、 対象になる人が限定されています。条文は「第百四条の規定により受けるべき者であって、政令で定める要件に該当するものに限る」としています。

104条は資格喪失後の継続給付の規定です。つまり退職後に継続給付として傷病手当金を受けている人が対象で、 在職中に傷病手当金を受けている人はこの調整の対象になりません。 在職中は老齢年金を受けていても傷病手当金がそのまま支給されます。

調整される場合の計算方法は障害年金と同じで、施行規則89条2項が 老齢退職年金給付の額(2つ以上あるときは合算額)を360で割り、1円未満を切り捨てると定めています。 その日額が傷病手当金より少なければ差額が支給されます。

なお、失業保険(基本手当)と特別支給の老齢厚生年金の併給調整はこれとは別の制度です。 そちらは年金と失業給付の調整で解説しています。

障害手当金を受けたとき(108条4項)

障害厚生年金ではなく一時金の障害手当金を受けられる場合は、別の扱いになります。 障害手当金の支給を受けることとなった日から、その後に受けるはずの傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでのあいだ、 傷病手当金は支給されません。一時金を先に受け取った分を、日々の傷病手当金で埋め合わせていく考え方です。

出産手当金との調整(103条)

出産手当金が支給される期間は傷病手当金が支給されません。 ただし出産手当金の額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。 出産手当金を支給すべき場合に傷病手当金が支払われていたときは、その分は出産手当金の内払いとみなされます。

まず傷病手当金の日額を出しておく

調整されるかどうかは、年金を360で割った日額と傷病手当金の日額を比べて決まります。比較する前提になる日額を計算できます。

傷病手当金を計算する

よくある質問

障害年金をもらうと傷病手当金は打ち切られますか?

同一の傷病で障害厚生年金を受けられるときは傷病手当金が支給されません(健康保険法108条3項)。ただし、その障害厚生年金の額(同一の事由で障害基礎年金も受けられるときは合算額)を360で割った日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。障害基礎年金だけを受けている場合は、この調整の対象になりません。

調整される金額はどう計算しますか?

健康保険法施行規則89条が「三百六十で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)」と定めています。たとえば障害厚生年金と障害基礎年金の合計が年間120万円なら、1,200,000÷360=3,333.33…で1円未満を切り捨てて3,333円。傷病手当金の日額が6,147円ならその差額2,814円が支給されます。

老齢年金をもらっていると傷病手当金はもらえませんか?

老齢退職年金給付との調整(健康保険法108条5項)の対象になるのは、健康保険法104条の資格喪失後の継続給付を受けている人のうち政令で定める要件に該当する人に限られます。在職中に傷病手当金を受けている人は、この調整の対象ではありません。調整される場合も、老齢退職年金給付の額を360で割った日額が傷病手当金より少なければ差額が支給されます。

出産手当金と傷病手当金は両方もらえますか?

出産手当金が支給される期間は傷病手当金が支給されません(健康保険法103条)。ただし出産手当金の額が傷病手当金より少ないときは、その差額が支給されます。また、出産手当金を支給すべき場合に傷病手当金が支払われていたときは、その傷病手当金は出産手当金の内払いとみなされます。

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