インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 木村 翔太さん(仮名)
- 年齢: 28歳
- 経験年数: 自衛隊6年(曹に昇任)
- 勤務先: 自衛隊 部隊
- 現在: 航空機整備会社で整備士として勤務
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Q: パワハラが始まったのはいつ頃からですか?
入隊から3年目、曹に昇任した直後からです。新しく配属された先任の曹長が非常に高圧的な人で、些細なミスでも全員の前で怒鳴り散らすタイプでした。最初は「厳しい指導」だと思って耐えていましたが、次第に私だけがターゲットにされるようになりました。
Q: 具体的にはどのようなことがありましたか?
航空機の整備作業中に、工具の置き場所が少しずれていただけで「お前は整備士失格だ」と30分以上罵倒されました。他の隊員が同じことをしても何も言われないのに、私だけ徹底的に叩かれる。休憩時間に他の隊員と話していると「サボっているのか」と怒鳴られ、一人で黙々と作業をしていると「協調性がない」と言われる。何をしても否定される状況でした。
Q: 組織内で相談はしましたか?
自衛隊には「服務指導」や「隊員相談室」という制度があります。隊員相談室に相談しましたが、相談員が同じ基地内の先輩で、結局曹長に話が伝わってしまい、逆に状況が悪化しました。「相談するような弱い奴は自衛隊に向いていない」と言われたのは今でも忘れられません。その後、防衛省のハラスメント窓口にも電話しましたが、「調査に時間がかかる」と言われ、すぐには状況が変わりませんでした。
Q: 退職を決断したきっかけは何でしたか?
ある日、整備作業中にめまいがして倒れたんです。医務室に運ばれて、「ストレスによる自律神経の乱れ」と診断されました。その時、「命を守るための仕事で、自分の命を削っている場合じゃない」と思いました。その日のうちに小隊長に依願退職の意思を伝えました。
Q: 退職の意思を伝えた後の反応はどうでしたか?
小隊長は理解を示してくれましたが、中隊長との面談では「曹長のことは対処するから、もう少し頑張れないか」と引き留められました。しかし、曹長が異動するまでに何か月かかるかわからず、その間に心身が壊れるリスクを考えると、待つ選択肢はありませんでした。退職願を連隊長宛に提出し、約2か月で退職が認められました。
Q: パワハラの証拠は残していましたか?
途中から、曹長に罵倒された日時・内容・場所・目撃者をノートに記録するようにしていました。録音は基地内のセキュリティ上できませんでしたが、記録だけでも残しておいたことは良かったと思います。退職後にハラスメントの申告を正式に行い、後から聞いた話では曹長は処分を受けたそうです。
Q: 転職活動はどうしましたか?
自衛隊で航空機の整備を担当していたので、民間の航空機整備会社を中心に探しました。自衛隊で取得した整備資格は民間でも評価されるので、転職先は比較的スムーズに見つかりました。就職援護制度も利用しましたが、最終的には自分で転職サイトから応募した企業に決まりました。
Q: 現在の職場環境はいかがですか?
パワハラとは無縁の職場です。民間企業なのでコンプライアンスが整備されていて、ハラスメント研修も定期的に実施されています。組織の上下関係は絶対的でしたが、民間では意見を言いやすい雰囲気があります。年収は自衛隊時代とほぼ同じ約400万円ですが、精神的な安定は比べものになりません。
Q: 同じ状況にいる自衛官にアドバイスをお願いします。
自衛隊は閉鎖的な組織なので、ハラスメントが外に出にくい構造があります。隊員相談室が機能しない場合は、防衛省の外部窓口や、弁護士に相談することをおすすめします。依願退職は権利です。「組織に迷惑をかける」「同期に申し訳ない」と思うかもしれませんが、自分の心身を最優先にしてください。自衛隊のスキルは民間でも十分通用します。辞めることは逃げではなく、次のステージに進むための選択です。