インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 小林 誠さん(仮名)
  • 年齢: 32歳
  • 経験年数: 自衛隊10年(曹)
  • 勤務先: 自衛隊 部隊
  • 現在: IT企業のインフラエンジニアとして勤務

---

Q: 10年間の自衛隊キャリアで感じていた不安とは?

自衛隊には「若年定年制」があります。幹部自衛官でなければ、曹の定年は53〜56歳程度です。一般企業の定年60〜65歳と比べると早く、定年後に再就職が必要です。30歳を過ぎた頃から「定年後にどうするのか」「今の自分のスキルで民間で通用するのか」という不安が大きくなっていきました。

Q: 給与面での不満はありましたか?

自衛隊の給与は俸給表で決まっているので、年功序列で少しずつ上がっていきます。10年目の1曹で年収は約450万円でした。安定はしていますが、大幅な昇給は見込めません。高校の同期で民間のIT企業に就職した友人は、10年目で年収600万円を超えていると聞いて、正直うらやましく思いました。自衛隊は住居費(官舎)が安いので実質的な可処分所得は悪くないのですが、将来の資産形成を考えると不安でした。

Q: 転職を考え始めたのはいつ頃ですか?

28歳くらいからぼんやりと考えていましたが、本格的に動き始めたのは30歳の時です。無線通信やネットワークの運用を担当していたのですが、ふと「このスキルは民間のIT業界でも通用するのではないか」と思い、在職中にIT関連の資格(基本情報技術者、CCNA)を取得しました。資格を取ってから、転職エージェントに登録しました。

Q: 在職中の転職活動は大変でしたか?

非常に大変でした。自衛隊は勤務時間外も規律に縛られることが多く、面接の日程調整が困難でした。有給休暇を使って面接に行きましたが、「何で休むのか」と上官に聞かれるので、「私用です」と濁すしかありませんでした。オンライン面接を導入している企業は助かりました。

Q: 退職願を出した時の反応はどうでしたか?

1曹まで昇任していたので、かなり強い引き留めがありました。中隊長からは「あと5年で上級曹長を目指せる」「退職金も増える」と言われました。上司からも「ベテランが抜けると部隊に影響が出る」と言われました。でも、「35歳を過ぎると民間への転職はさらに厳しくなる」という焦りがありました。

Q: 退職の手続きで苦労した点は?

依願退職の手続き自体は定型ですが、退職の意思を伝えてから実際に退職するまでに約4か月かかりました。後任への引き継ぎ、装備品の返納、身分証の返納など、手続きが多岐にわたります。特に通信科は機密に触れる機器を扱っていたため、秘密保全に関する誓約書の手続きもありました。

Q: 転職後の年収や待遇はどう変わりましたか?

年収は約450万円から約550万円に上がりました。IT企業のインフラエンジニアとして、サーバーやネットワークの構築・運用を担当しています。自衛隊の通信科で培ったネットワークの知識と、在職中に取得したIT資格が評価されました。リモートワークも週3日可能で、ワークライフバランスは大幅に改善しました。

Q: 将来性への不安から退職を考えている自衛官にアドバイスをお願いします。

自衛隊で身につけたスキルは、自分が思っている以上に民間で評価されます。通信科ならIT、施設科なら建設、需品科なら物流など、各職種に対応する民間の業界があります。ただし、民間で通用するためには資格の取得が重要です。自衛隊にいる間に取れる資格は積極的に取得しておきましょう。また、転職は若いほど有利です。「定年までいて退職金をもらってから」と考える方も多いですが、30代のうちに動いた方が選択肢は広がります。就職援護だけでなく、民間の転職エージェントも活用して、自分の市場価値を客観的に把握することをおすすめします。