# 料理長のパワハラに耐えかねて退職|レストラン調理師7年目の決断
インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 吉田 圭介さん(仮名)
- 年齢: 29歳
- 経験年数: フレンチレストラン 調理師 7年
- 勤務先: フレンチレストラン
- 退職後: 給食委託会社に転職
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Q: どのようなパワハラを受けていましたか?
飲食業界、特に調理場は体育会系の文化が根強く残っています。私が勤務していたレストランの料理長も、「厳しい指導」という名のパワハラを日常的に行っていました。
具体的には、調理中のミスに対する怒鳴り声は毎日。「お前の料理は犬も食わない」「辞めちまえ」という暴言は日常茶飯事でした。ピーク時にオーダーが立て込むと、厨房は戦場のような雰囲気になり、フライパンを投げつけられたこともあります。
一番つらかったのは、自分が作った料理を客の前ではなく、バックヤードで料理長に捨てられることです。「こんなもの出せるか」と言いながら、ゴミ箱に投げ入れる。何時間もかけて仕込んだソースが一瞬で無駄になる。その繰り返しで、自分の存在価値を否定されている気分でした。
Q: 飲食業界ではパワハラは「指導」として許容されるのですか?
残念ながら、多くの飲食店ではそうです。「厳しい厨房で鍛えられてこそ一人前」「昔はもっと厳しかった」というベテランの言葉が、パワハラを正当化する空気を作っています。
私自身も入社当初は「料理の世界はこういうものだ」と受け入れていました。でも、7年目になって冷静に考えると、暴言や暴力で料理の腕が上がるわけがない。恐怖で人を支配しているだけです。
飲食業界のパワハラが見過ごされやすい理由は、個人経営の店が多く、人事部や相談窓口が存在しないことです。私のレストランも、オーナーシェフが料理長を兼ねていたので、相談する先がありませんでした。
Q: 退職を決断したきっかけは何でしたか?
ある日の営業中、料理長に手を出されました。仕込みのカット方法を巡って口論になり、頭を小突かれたんです。過去にも物を投げつけられたことはありましたが、直接身体に触れる暴力は初めてでした。
その夜、帰宅してシャワーを浴びながら泣きました。29歳にもなって、仕事で泣いている自分が情けなくて。でも同時に、「これ以上ここにいたら、自分が壊れるか、あるいは自分も後輩に同じことをしてしまう」と思いました。
翌日、労働基準監督署に電話して相談しました。暴行の事実があれば警察に被害届を出せること、退職後に未払い残業代を請求できることなど、具体的なアドバイスをもらいました。
Q: 退職の手続きはどう進めましたか?
飲食店の退職は、直接オーナーや店長に伝えるのが一般的ですが、私の場合はパワハラの加害者がオーナー本人だったので、書面で退職届を提出しました。直接渡すのは精神的に無理だったので、営業時間外に店に置いてきました。
退職届の提出から2週間後に退職する旨を記載しました。就業規則は「1ヶ月前に申し出ること」となっていましたが、パワハラの事実がある場合は2週間前の通知でも問題ないと労基署でアドバイスを受けました。
案の定、退職届を見た料理長から電話がかかってきて、「人手不足なのに無責任だ」「恩を仇で返すのか」と言われました。でも、もう引き返す気はありませんでした。電話の内容は録音しておきました。
Q: 退職後に何か法的なアクションは取りましたか?
退職後、労働基準監督署に未払い残業代の申告を行いました。飲食店の多くは正確な勤怠記録をつけていないので、自分のメモ(出勤・退勤時間の記録)とLINEのやり取り(「今日は仕込みで9時出勤」などの記録)を証拠として提出しました。
結果的に、約150万円の未払い残業代が支払われました。飲食業界では残業代が支払われないことが常態化していますが、法律上は支払い義務があります。退職前に勤怠記録を残しておくことは極めて重要です。
暴行については、軽微だったこともあり被害届の提出は見送りましたが、記録は残しています。
Q: 同じ状況にいる飲食業界の方にメッセージをお願いします。
「飲食はこういう世界だから仕方ない」と思っている方、それは違います。暴言・暴力は指導ではありません。パワハラです。どんな業界でも許されることではありません。
退職を決意したら、以下の準備をしてください。
- 1 勤怠記録を毎日つける(スマホのメモでOK)
- 2 パワハラの記録を残す(日時、内容、目撃者)
- 3 退職届はコピーを取って手元に保管する
- 4 可能であれば転職先を決めてから退職する
飲食業界の経験は、食品メーカー、給食会社、ホテル、フードコンサルなど、多くの業界で活きます。調理師免許や食品衛生責任者の資格があれば、選択肢はさらに広がります。
退職届の作成はこのサイトのテンプレートが便利です。飲食店の場合、小規模な個人店だと「退職届の書き方が分からない」という方も多いと思いますが、テンプレートに沿って記入するだけで正式な書類が作れます。
あなたの料理人としてのスキルは、パワハラの厨房でなくても磨くことができます。健全な環境で、楽しく料理を作れる職場は必ずあります。