# 支配人の理不尽な指示と古い体質に疲弊、退職を決めた経緯
- 名前: R.Oさん(仮名)
- 年齢: 29歳
- 経験年数: 6年(老舗旅館・仲居兼フロント)
- 勤務先: 旅館
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Q: どのような職場環境でしたか?
創業100年以上の老舗旅館で、仲居兼フロントとして働いていました。旅館は「おもてなし」の精神を大切にする素晴らしい世界ですが、裏を返せば「お客様のためなら何でも我慢しろ」という空気がありました。
問題は支配人です。60代の男性で、旅館に30年以上いる方でした。「自分のやり方が正しい」という信念が強く、若いスタッフの意見は一切聞きません。
Q: 具体的にはどんなことがありましたか?
日常的に以下のようなことがありました。
- 客前で「そんな所作もできないのか」と叱責する
- 休憩時間に呼び出して仕事を指示する(「休んでる暇があるなら花を活けろ」)
- シフトを勝手に変更する(「明日の夜勤、お前が入れ」と前日に言われる)
- 若いスタッフの髪型・化粧・服装に細かく口を出す(「前髪が1cm長い」など)
- 古参スタッフと若手で明らかに態度を変える
特に理不尽だったのは、お客様からのクレームの対処です。支配人が独断で「料金を半額にする」と約束してしまい、その処理を私に丸投げする。帳簿が合わなくなると「お前の処理が悪い」と責められる。
旅館は住み込みのスタッフもいる閉鎖的な環境なので、プライベートと仕事の境界がなく、精神的な逃げ場がありませんでした。
Q: 相談できる場所はありましたか?
旅館の経営は支配人がほぼ全権を握っていて、オーナーは経営に口を出さないタイプでした。人事部もありません。本部もない独立経営なので、相談先が社内にないんです。
同僚のスタッフとは愚痴を言い合えましたが、結局「我慢するしかないよね」で終わる。先輩からは「うちはまだマシだよ。前にいた旅館はもっとひどかった」と言われて、業界全体がそうなのかと絶望しました。
4年目に労働基準監督署に相談しました。休憩時間の問題と、残業代の未払い(旅館はサービス残業が当たり前の文化がある)について指導が入りましたが、支配人は「指導は受けた。で?」という態度でした。
Q: 退職を決めたきっかけは?
決定的だったのは、5年目のお盆の出来事です。お盆は旅館の最繁忙期で、連日14時間以上働いていました。3日目に体調を崩し、38度の熱が出ました。支配人に報告すると「今辞められたら困る。解熱剤を飲んで出ろ」と。
マスクをして接客していると、お客様から「体調悪そうだけど大丈夫?」と心配されました。その時、「お客様に心配をかけている」「体調不良で満足なおもてなしができない」「でも休ませてもらえない」。この3つが重なって、「もうここにはいられない」と確信しました。
Q: 退職届はどう出しましたか?
お盆明けに支配人に退職の意思を伝えました。案の定「今辞められたら困る」「次の繁忙期まで残れ」と言われましたが、「体調の問題で続けられません」と押し通しました。
退職届はオーナー宛てに提出しました。支配人ではなくオーナーにしたのは、支配人に握りつぶされる可能性があったからです。オーナーに直接手渡しし、退職日は1ヶ月後に設定しました。
民法上は2週間前に申し出れば退職できますが、旅館は予約が入っているので、最低1ヶ月は引き継ぎ期間を設けたほうがトラブルになりません。
引き継ぎでは、担当していた客室の管理方法、常連のお客様の情報、仲居としてのサービス手順をノートにまとめました。住み込みだったので、退去の手続きも同時に進めました。
Q: 退職後はどうなりましたか?
退職後は都市部に引っ越し、ビジネスホテルのフロントに就職しました。旅館と比べると業務がシステム化されていて、残業もほとんどありません。年収は同程度ですが、生活の質は格段に上がりました。
旅館で6年間培った接客スキルは、どの接客業でも通用します。お辞儀の角度、言葉遣い、お客様の表情から気持ちを読み取る力。これらは旅館でなければ身につかないスキルです。
パワハラに悩んでいるホテル・旅館スタッフの方は、「この業界はこういうもの」と諦めないでほしいです。まともな職場はたくさんあります。環境を変えれば、同じ仕事でもこんなに違うのかと驚くはずです。