# 勤続10年でも年収300万円台、ホテル業界の待遇に見切りをつけた話
- 名前: M.Tさん(仮名)
- 年齢: 34歳
- 経験年数: 10年(シティホテル・宴会サービス)
- 勤務先: シティホテル
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Q: 待遇に不満を感じ始めたのはいつですか?
最初から薄々感じていましたが、目を背けていた部分はあります。入社時の月給は18万円。ホテル業界は「やりがい搾取」という言葉がぴったりで、「お客様の笑顔がやりがい」という精神論で低賃金を正当化する空気がありました。
はっきり危機感を持ったのは入社7年目、30歳の時です。年収は夜勤手当・残業代込みで340万円。同い年の友人は400〜500万円。住宅ローンの審査で「もう少し年収が高ければ」と言われた時に、現実を突きつけられました。
Q: ホテル業界の給与水準についてどう思いますか?
ホテル業界の平均年収は全産業の中で最も低い水準です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査でも、宿泊業・飲食サービス業は毎年ワーストクラスです。
うちのホテルでは、10年目の主任で年収350万円、係長で380万円、課長で420万円、支配人でも500万円程度。しかも支配人になれるのは一握り。大多数のスタッフは、定年まで働いても年収400万円に届かない計算でした。
サービス料(チップ)制度がある外資系は別ですが、国内ホテルの大半は薄利経営で、給与に回す余裕がない。ホテルの建物の維持費、光熱費、リネン代などの固定費が重いので、人件費は常にカットの対象になります。
Q: キャリアの限界を感じた瞬間は?
宴会サービスのチーフになった9年目に、後輩の教育をしながらふと思いました。「この後輩も10年後、自分と同じ年収になるのか」と。
ホテルのキャリアパスは基本的に「現場のたたき上げ」です。サービススタッフ → チーフ → アシスタントマネージャー → マネージャー → 支配人。でも、どのポジションになっても「現場で体を動かす」仕事であることは変わりません。40代、50代になって、宴会場でテーブルを運び、皿を運ぶ体力が維持できるのか。
また、ホテル業界はコロナ禍で壊滅的な打撃を受けました。うちのホテルも稼働率が20%台まで落ち、ボーナスはカット、一時帰休も経験しました。「この業界は外部要因に脆弱すぎる」と痛感しました。
Q: 転職活動はどのように進めましたか?
「ホテル業界で鍛えられたスキルは他業界でも通用する」と信じて転職活動を始めました。具体的には以下のスキルをアピールしました。
- 高いコミュニケーション能力(VIPゲスト対応の経験)
- チームマネジメント(20名以上の宴会スタッフの統括)
- 危機管理能力(急なキャンセル、設備トラブル、クレーム対応)
- 英語での接客経験
- 売上管理・原価管理の知識
転職エージェントからは「営業職か人材業界が合う」と言われました。最終的にウェディング企業の法人営業と、IT企業のカスタマーサクセスの2社から内定をもらい、IT企業を選びました。年収は430万円からスタートです。
Q: 退職届の提出と退職までの流れを教えてください。
宴会マネージャーに退職の意思を伝えました。「キャリアの幅を広げたい」と前向きな理由にしました。「待遇が不満」とは言いませんでした。
退職届は総支配人宛てに提出。退職日は1ヶ月半後に設定しました。宴会部門は予約状況に合わせて人員を調整するので、大型宴会が入っている日を避けて退職日を決めました。
- 宴会サービスのオペレーションマニュアル
- 各企業の担当者情報と過去の宴会実績
- テーブルレイアウトのパターン集
- ワイン・ドリンクの知識集
- 新人教育のカリキュラム
Q: 転職後の感想は?
転職して1年半ですが、年収は470万円まで上がりました。前職の10年間で得た昇給を、1年半で超えました。
IT業界はリモートワークも可能で、残業も少なく、有給も取りやすい。何より「成果を出せば評価される」仕組みが明確です。ホテル業界の「年功序列で、長くいれば少しずつ上がる」という仕組みとは根本的に違います。
ホテル業界で待遇に悩んでいる方に伝えたいのは、「ホスピタリティのスキルは市場価値が高い」ということです。特に、きめ細やかな気配り、クレーム対応力、チームマネジメント力は、どの業界でも求められます。「ホテルしか経験がない」と卑下せず、まずは転職市場での自分の価値を確かめてみてください。